きっと運命!「高校生のうちに出会って」 埼玉の高校図書館司書、イチオシ本に「成瀬は天下を取りにいく」

1位に選出された「成瀬は天下を取りにいく」

 「埼玉県の高校図書館司書が選んだイチオシ本2023」が16日、発表された。本の専門家の投票によるベスト10で、「成瀬は天下を取りにいく」(宮島未奈著、新潮社)が1位に選出された。主催する県高校図書館フェスティバル実行委員会は「高校生の背中を押してくれる作品。今を生きる高校生に、今ぜひ読んでほしい」と呼びかけている。

 22年11月~23年10月までに出版された本を対象に、県内の高校図書館司書ら142人が投票し、193タイトルからベスト10を決定した。

 1位の作品は、中学時代に閉店を控える西武大津店(大津市)へ毎日通ったり、「M1グランプリ」に挑戦するなど、我が道を突き進む成瀬あかりが主人公の青春小説。女による女のためのR-18文学賞、坪田譲治文学賞を受賞。高い評価を受ける中、24年本屋大賞にノミネートされ、1月には続編「成瀬は信じた道をいく」が出版された。

 著者の宮島さんは「カバーイラストの成瀬は西武ライオンズのユニホームを着ています。ライオンズの本拠地である埼玉でイチオシ本に選ばれるなんて、運命だったのかもしれません。ぜひ高校生のうちに成瀬と出会ってください!」とコメントしている。

 同委員会事務局の県立妻沼高校司書の長沼祥子さん(32)は、「成瀬は―」について、「自分のやりたいことにも理由を求められがちな時代。周囲の目を気にせず、自分のやりたいことに全力で取り組んでほしいというメッセージが支持を集めたと思う。成瀬の生きざまに勇気をもらえ、高校生の背中を押してくれる」と評価。文章は軽快で読みやすく、長沼さんは「最後の章が好きで、生徒たちに最後まで読んでほしい」と薦めている。

 常連の人気作家による2位と3位を含め、コロナ禍を経験した世代へ向けた作品や戦争での体験談、自分の居場所を模索する人々の姿が描かれている作品が多く選ばれた。長沼さんは「今の時代が反映されている選書となっていると思う」と話している。

 実行委会長で県立浦和第一女子高校担当部長兼主任司書の木下通子さんらによる、「成瀬は―」の編集者へのインタビューを動画投稿サイト「ユーチューブ」で配信。イチオシ本2023フェアが17日から、県内の90公共図書館、書店55店舗などで開催される。

■高校図書館司書のイチオシ本ベスト10

(1)「成瀬は天下を取りにいく」(宮島未奈著、新潮社) (2)「この夏の星を見る」(辻村深月著、KADOKAWA) (3)「私たちの世代は」(瀬尾まいこ著、文芸春秋) (4)「続 窓ぎわのトットちゃん」(黒柳徹子著、講談社) (5)「レーエンデ国物語」(多崎礼著、講談社) (6)「祖母姫、ロンドンへ行く!」(椹野道流著、小学館) (7)「宙(そら)わたる教室」(伊与原新著、文芸春秋) (8)「推しの素晴らしさを語りたいのに『やばい!』しかでてこない」(三宅香帆著、ディスカヴァー・トゥエンティワン) (9)「世界でいちばん透きとおった物語」(杉井光著、新潮社) (10)「リカバリー・カバヒコ」(青山美智子著、光文社)

実行委員会は担当編集者にインタビュー。動画がユーチューブで配信されている(提供写真)

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