《新刊ガイド・グンマ推し》「火山に馳す 浅間大変秘抄」(赤神諒著)

 1783(天明3)年の浅間山大噴火による土石流で埋没した旧鎌原村(群馬県嬬恋村鎌原)を舞台にした歴史小説。現地に派遣された幕府勘定吟味役、根岸九郎左衛門が、生き残った村人と共に村を再建しようと奮闘する姿を描く。

 大噴火で村人の8割が死に、助かったのは高台の観音堂に避難した者ら93人のみ。根岸は生き残った村人同士を新たに組み合わせて家族をつくり直し、再出発させようとするが、村人たちが負った心の傷は大きく、難航する。

 根岸の方針に真っ向から反対する地元の代官、原田清右衛門が進言する通り、廃村と移住を選択するべきなのか。苦悩しながらも根岸は、幕府側の不穏な動きにも屈することなく、村人たちと奇跡の復興を成し遂げていく。「故郷」と「生きる意味」を問い直す作品だ。(角川書店・2090円)

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