世にも珍しい「動くセンターライン」に「怖い」の声 走る方向が時間帯で逆転 渋滞緩和目的も「通りたくない」

午後5時になる直前の県道高島大津線。中央線が矢印の標識と白線上の点滅電灯で示されている。写真手前が北で、右左折車線を除いた中央の3車線は、北進1車線、南進2車線となっている(昨年12月13日、大津市)

 時間帯で車道の中央線の位置を変え、走行方向を逆転させる「中央線変移システム」が、近畿地方で唯一、滋賀県大津市内の滋賀県道に残っている。渋滞緩和策として1970年代に導入されたが、ドライバーからは「分かりにくくて怖い」「通りたくない」といった声が上がっている。滋賀県警は1月23日からおおむね半年間、試行的にシステムを廃止して中央線を固定することにした。

 ■「北進2車線・南進1車線」が「北進1車線・南進2車線」に

 同システムが用いられているのは、滋賀県道高島大津線の大津港口交差点から柳が崎交差点までの約2キロ。この区間は3車線(右左折車線を除く)で、通常は「北進2車線・南進1車線」だが、午前7~9時と午後3~5時は「北進1車線・南進2車線」に変更される。

 道路の上に設置されている矢印の標識と、白線上の点滅電灯が中央線の位置を示す。時間が来ると矢印と電灯が移動することで、ドライバーに中央線と走行方向の変更を伝える仕組みだ。

 ■導入は1979年 競輪場と競艇場の開催日がきっかけに

 滋賀県警交通規制課によると、この区間に同システムが導入されたのは1979年。通勤時間帯や沿線にあった競輪場と競艇場の開催日に起きる渋滞の緩和が狙いだった。しかし、近くを通る西大津バイパスが2013年に4車線になったことで、1979年に3万8千台だった同区間の交通量は2022年には2万9千台と、約1万台も減った。

 その一方で、この区間では一昨年までの5年間に64件の人身事故が発生。滋賀県警は「他の区間に比べて多いわけではない」とするが、18年に台風21号の影響で矢印の標識が故障して中央線を半年間固定したことがあり、災害時のぜい弱さも露呈している。

 ■更新には多額の費用を見込み…

 システムの機器更新時期を迎えているが、更新には約5億円もかかるという事情もある。そのため滋賀県警は21年から、システムを継続するか、廃止して中央線を固定するかの議論を本格的にスタート。

 業者に依頼し、廃止した場合の交通量変化や渋滞の発生状況をいくつかのシミュレーションごとに予測した。

 その結果、同区間のほぼ真ん中にある尾花川交差点から北側は「北進2車線・南進1車線」、南側は「北進1車線・南進2車線」で中央線を固定するシミュレーションが、円滑な車線の切り替えが可能で、渋滞も最も短いことが分かった。

 ■全国的にも縮小、廃止の傾向

 そこで1月23日からシステムを約半年間停止し、このシミュレーションに沿って中央線を固定することに。この間の渋滞状況などを確認した上で最終的に廃止か継続かを決める。

 滋賀県警の説明では、分かりやすい交通規制が求められる中で、このシステムは全国的にも縮小、廃止の傾向にあるという。

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