「売られたけんかは買う」が根幹…浦和サポの暴徒化問題で第三者委が提言書 公開シンポでOB阿部氏呼び掛け

第三者委員会の武藤芳照委員長(左)から浦和の田口誠代表に提言書が手渡される=16日午後、浦和コミュニティセンター多目的ホール((C) URAWA REDS)

 昨年8月2日の天皇杯全日本選手権4回戦の名古屋戦でサポーターが暴徒化した問題を受け、浦和は16日、東大名誉教授の武藤芳照委員長ら有識者による第三者委員会による公開シンポジウムを埼玉県さいたま市で開催した。同委員会は問題について、一部サポーターの間違った認識が根幹にあったと指摘。浦和に毅然(きぜん)とした対応などを求めた。

 同問題は名古屋との試合後、浦和サポーターの一部が名古屋サポーターや警備員に暴行を加えるなどした。日本サッカー協会は浦和の次回の天皇杯の参加資格を剥奪。浦和はこれまでに22人を無期限入場禁止処分、31人を有期入場禁止処分、11人を厳重注意処分とした。また、違反行為が確認されたが個人の特定に至っていない16人は引き続き調査を続けるとしている。

 昨年11月に発足した同委員会は8人で構成。計4度の会議を行い、当該事案、事案以前のクラブの対応を分析し再発防止策の提言をまとめた。暴動の動機となった「早く帰れ、弱いな、死ね」などの挑発発言とともに、試合に敗戦したことによるストレスが発生の一因になったと結論づけた。

 挑発行為があったとはいえ「売られたけんかは買う」という一部浦和サポーターの間違った認識が根幹になっていると指摘。クラブにビジターゲームでの対応や、法的措置を含めた毅然とした対応、コンプライアンス部署の設置などを提言。サポーターには自らの怒りよりもチームの勝利を優先する姿勢を強く求めた。

 試合が行われたスタジアムの規模についても触れられた。普段Jリーグでは使用しない小規模スタジアムのCSアセット港サッカー場で事案が発生。サポーター同士の緩衝エリアは少なく、フェンスの高さがわずか1メートルだったことや、警備体制など運営体制も問題視した。

 シンポジウムの第2部で登壇した浦和OBの阿部勇樹氏は「駄目なものは駄目。積み上げてきたものを壊してしまうのは簡単。サポーターとつくり上げてきた浦和を未来につないでいかないといけない」と会場の185人を前に訴えた。

 提言書を受け取った浦和の田口代表は「サポーターとのコミュニケーションが十分ではなかった。受けた提言をどうやって実行に移すかが大事。ぶれずにリーダーシップを執って徹底的にやっていく」と話した。

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