「悪いのは彼ではない」失点関与を謝罪した久保建英をソシエダ番記者が擁護。深刻な得点力不足に悲嘆「タケ1人で解決できる次元ではない」【現地発】

タケ・クボ(久保建英)は適切な時期に適切な場所に降り立った、と誰もが思っている。それは加入後わずか1年半でレアル・ソシエダのファンを虜にし、ラ・リーガの顔となったことからも明らかだ。

彼の門前に “求婚者”が列をなしている状況を考慮して、ホキン・アペリバイ会長は、クラブとの契約を2029年まで延長し、夏に退団する可能性を排除した。契約解除金は6000万ユーロのまま据え置かれたが、移籍市場の動向を踏まえれば、悪くない額だ。

ファンの間ではこの1か月間、タケの待望論が巻き起こっていた。チームはゴールネットを揺らすことにますます問題を抱えるようになっており、彼の帰還が再び道を開く起爆剤になると期待されていた。しかし、問題はすでに1人で解決できる次元のものではなくなっている。

ラ・リーガ屈指の攻撃的なサッカーを展開すると評価されているチームが、公式戦5試合連続でノーゴールと深刻な得点力不足に悩まされている。クラブの歴史の中で1973年以来の不名誉な記録であり、フロントのCFの補強を巡る悲惨なマネジメントを浮き彫りにしている。

タケは危険なプレーを生み出すマシーンのような選手だが、ゴール前で脅威となる選手がいなければ、せっかくのチャンスメイクは宙ぶらりんのまま終わってしまう。はっきりしているのは、彼がすべてをこなせるわけではないことだ。

イマノル・アルグアシル監督はドリブル、クロス、フィニッシュワークに加えて、守備でも大きな貢献を求められているが、パリサンジェルマンとのラウンド16のファーストレグでは、冒頭の状況とは正反対の、不適切な時期に不適切な場所に降り立つことを余儀なくされた。

責任を問うべきは、パリの攻撃のリズムを断ち切ろうと、負傷したように見せかけたアマリ・トラオレの行動だ。おかげでメディカルスタッフが駆け寄り、ピッチの外に退かなければならなくなり、直後の相手CKの場面でタケが割を食う形でトラオレに代わって、キリアン・エムバペのマーク役を任される羽目になった。

結果的にソシエダは先制点を許した。全盛期のマラドーナに、ロマーリオがマークを付くような火事場泥棒の発想で損な役回りをさせられたタケは試合後のインタビューで謝罪したが、言うまでもなく悪いのは彼ではない。

【動画】「僕のミス」と久保が謝罪。ソシエダ指揮官が激怒したエムバペの先制点
攻撃面ではタケはいつものタケだった。右サイドに張り付きながら、SBのトラオレの動きが足かせになることも少なくなかった中、カットインからのシュート(18分)、足首にスナップを利かせ蹴り込んだクロス(22分)、相手GKのジャンルイジ・ドンナルンマのパンチングで弾き出されたCKの直後の右足クロス(41分)とチャンスを量産した。

しかしハーフタイム明けの前述のパリの先制点を境に、ソシエダの攻撃の勢いが低下。タケもゴール前から遠ざけられ、フィニッシュに絡む機会も減少した。89分のアルセン・ザハリャンのショートコーナーから入れたグラウンダーのクロスが唯一の見せ場だったが、ホン・パチェコのシュートは枠を大きく外れた。

サッカーにおいてゴールがなければ、楽園はない。タケのような個の局面打開力を誇る選手がいれば、この長い干ばつからもそのうち回復できそうなものだが、信頼できる得点源の不在が事態を深刻にしている。

このままでは2点のビハインドを負って迎えるセカンドレグも、リベンジに燃えるタケの怒りがソシエダにとって最大の拠り所となりそうだ。

取材・文●ミケル・レカルデ(ノティシアス・デ・ギプスコア)
翻訳●下村正幸

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