避難先でも勉強あきらめない…能登半島地震で塾団体が連携し受験生を支援、無償で通える仕組みをつくる

鹿児島の生徒と一緒に受験勉強に励む石川県穴水町の中学3年生(右)=1月30日、鹿児島市の進学塾MUGEN紫原校

 能登半島地震で被災した中学3年の受験生が2次避難先でも無償で塾に通える仕組みを、石川県内の塾団体「学習塾協議会いしかわ」と全国組織の「全国学習塾協会」が連携してつくった。モデルケースとなったのが鹿児島市の親戚宅に避難し、近くの塾で受験対策の支援を受ける石川県穴水町の女子生徒の事例。他の大規模震災時での活用も期待される。

 対象は地震の影響で石川県内外に避難している中学3年生。協議会いしかわウェブサイトの専用フォームなどから申し込み、面談すると、個々に合った塾を探してもらえ、公立高校入試がある3月上旬まで無料で通える。

 塾約400社が加盟する全国学習塾協会は2011年の東日本大震災発生時も、受験生を無償で受け入れる塾の一覧をサイトに掲載した。國立拓治理事(49)=さくら個別指導学院(愛知県)代表=は「サイトを見た一部の人しか支援できず、効果的は限定的だった」と振り返る。

 鹿児島市の事例は、協議会いしかわに加盟する七尾市の塾から「鹿児島に避難した生徒がいる。受験対策ができる塾を探してほしい」と協会に相談が寄せられたことがきっかけだった。避難先からの通いやすさ、志望校に合った学習支援など生徒の希望に沿う塾を探し、協会や協議会いしかわに寄せられた義援金約1000万円(16日時点)から、入会金や受講費を捻出する仕組みが考案された。状況に応じて対象の学年や期間を広げることも検討するという。

 國立理事は「義援金から生徒の費用を塾に支払うので、協会に加盟していない塾にも依頼しやすい」と明かす。穴水町の生徒を受け入れた鹿児島市の進学塾MUGENとは面識がなかった。「鹿児島が被災した時にも活用できる仕組みだと感じた」とMUGENの小牧聖代表(59)。今後の取り組みに役立てばと、支給された資金はそのまま全額、協議会いしかわに寄付した。

 國立理事は「入試が迫っているので、必要な子がいれば一日でも早く支援したい。今後、大規模震災が起きた時に、迅速に対応できる体制を整えていく」と話した。

(別カット)鹿児島の生徒と一緒に受験勉強に励む石川県穴水町の中学3年生(手前)=1月30日、鹿児島市の進学塾MUGEN

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