音楽家親子に励みを 輪島で被災、ピアノと南砺へ 関係者ら、3月23日にコンサート

避難先の家に運び込まれたピアノを弾く仲谷さん。音に聴き入る長男陽一郎さん(右から3人目)と支援者=南砺市高儀

 能登半島地震で輪島市の自宅が被災し、南砺市内で、避難生活を続けるピアノ教室経営の仲谷美千代さん(69)と長女で声楽家の響子さん(40)らを応援しようと同市の音楽関係者が3月23日、市福野文化創造センターヘリオスで、能登震災支援コンサート(富山新聞社後援)を開く。関係者が、自宅からグランドピアノを“救出”し18日、南砺の家に運び込んだ。美千代さんは「皆さんに感謝しかない。やる気が出てきた」と意欲を語った。

 音大卒の美千代さんは25歳で輪島市の夫陽木(はるき)さん(71)と結婚。埼玉県から輪島へ嫁ぐ際、嫁入り道具のように持ち込まれたのが1899年(明治32年)製造の名器「スタインウェイ」のグランドピアノだった。美千代さんは40年以上、同市新橋通の自宅でピアノ教室を開き、長女響子さんも芸術大を出て、金沢市内でメゾソプラノ歌手として活躍する傍ら、輪島市の小学校で音楽講師を務めてきた。

 しかし、能登半島地震で生活は一変。自宅は倒壊寸前となり、体育館に避難した後、被害が少なかった義母が暮らした家で避難生活を続けた。都内で働く長男陽一郎さん(42)の勧めで、輪島を一時離れることを決めた。南砺市内の親類の連絡を受け、1月15日から同市高儀の空き家に仮住まいすることになった。

 ピアノ調律を担当した竹田楽器(南砺市)の竹田時康社長(80)が、美千代さんの願いを受け、トラックを出して2月7日、輪島市の自宅からグランドピアノを運び出し、南砺市内の倉庫を経由して、同18日に同市高儀の家に移した。遠縁の河合正登さん(63)=同市=が申し出て、アップライトピアノも運ばれた。

 「能登震災支援コンサート」は竹田社長の企画で、2部構成で、仲谷さん親子や射水市出身の声楽家澤武紀行さん指揮による氷見市第九合唱団の有志、宮城県山元町出身のギター弾き語りの森加奈恵さんや富山、石川県内の奏者が出演する。一般3千円、小中高校生千円で、収益は南砺市に義援金として届ける。

 竹田社長は「4月に響子さんの公演も計画し、支援を続ける」と語り、美千代さんは「心が折れかかっていたが、音楽は私の力になる。皆さんに感謝して公演を成功させたい」と話した。

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