世界の自動車産業地図を描き替える中国車、欧米メーカーは強く警戒―中国メディア

電気自動車などを中心に中国からの自動車輸出が激増しており、欧米メーカーは強く警戒するようになった。写真は「主戦場」の一つであるメキシコの首都のメキシコ市。

中国メディアの観察者網は16日付で、フォーチューンやロイターなど欧米メディアの報道を引用しつつ、欧米の大手自動車メーカーが中国車の輸出急増に注目し、大いに警戒している状況を紹介する記事を発表した。

ソフトウェア関連などを手掛けるウルフラム・リサーチが15日にニューヨークで開催した自動車関連の会議では、欧米の自動車大手企業の高級幹部の多くが、中国の自動車メーカーによる競争圧力の激化に対応するために、電気自動車(EV)の生産コスト削減に知恵を絞っていることを明らかにした。フォードのジム・ファーリー最高経営責任者(CEO)は、「メキシコで販売されている自動車の25%が中国製だ。世界は変化しつつある」と発言したという。

なお、メキシコ統計局とメキシコ自動車流通企業協会による1月24日の発表によると、比亜迪(BYD)、江淮汽車(JAC)、吉利など中国ブランド車の2023年におけるメキシコでの販売台数は前年比63%増の12万9329万台だった。メキシコ市場での中国車のシェアは19.5%で、同年通年ではファーリーCEOが言及した25%には達しなかったが、19年には6.4%だったことを考えれば、いずれにせよ激増状態だ。

フォーチュンによると、米国や欧州の自動車メーカーはかつて、米EVブランドのテスラに追いつこうと努力したが、その後になり、より低価格の中国のEVの海外販売が加速して、競争が激化した。西側の自動車メーカーにとって難しいのは、EVの価格を引き下げて市場を奪い合うことと、投資家が求める利益を得ることを両立せねばならないことだ。

世界第4位の自動車グループであるステランティスのカルロス・タバレスCEOは中国自動車メーカーの躍進に関連して、「私が短期主義者なら、利益率を低下させるだけで、EVの販売台数をすぐに伸ばすことができる」と自嘲(じちょう)気味に語った。

ロイターによると、ステランティス傘下のブランドであるシトロエンは23年、中国の競合他社と低価格EV市場で競い合うために、2万3300ユーロ(約377万円)の低価格車種を発表した。同社のタバレスCEOは、電池の原材料コストの低下のおかげで、この車の利益は従来のガソリン車に「近づきつつある」と説明し、低価格路線を加速したいと述べた。

仏ルノーも同様に、EVのコスト削減に注力している。ただし同社のルカ・デメオCEOは、大型モデルについては価格引き下げは難しいとの考えを示した。

フォーチュンは、BYDなどの中国の自動車メーカーの強みは、電池のサプライチェーン全体を確保していることと指摘した。電池のコストは一般的にEV価格の4割程度を占めているので、中国メーカーは電池を「押さえて」いることで強大な競争力を得ているという。

米フォードはそのため、電池戦略を重視している。ファーリーCEOは15日の会議で、中国メーカーの躍進への対応について、電池生産については競合他社と協力することに意義があるとの考えを示した。ゼネラルモーターズ(GM)のメアリー・バーラCEOも、同様の考えを示した。

ロイターは、米国の自動車メーカーは、BYDなど中国の電気自動車メーカーがメキシコに工場を建設して、米国にEVを輸出することを懸念していると報じた。メキシコは北米大陸の自動車市場の拠点だ。メキシコは世界第7位の自動車生産国であり、同時に第5位の自動車部品生産国だ。豊富な金属鉱物や人材資源も有している。しかも中国の自動車メーカーは近年、メキシコでの販売が圧倒的な伸びを記録している、

ファーリーCEOは、「世界規模で中国人と公平に競争できなければ、今後数年以内に売上高の20%-30%がリスクにさらされる」などと述べた。

BYD、吉利、さらに上海汽車傘下になったMGの中国三大EVメーカーはすでに、メキシコに工場を建設する動きを進めている。米国政府はこの動きを警戒している。一方で、中国政府商務部は米国政府の動きについて「第三者が中国とメキシコの実務協力に介入する権利はない」と表明した。(翻訳・編集/如月隼人)

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