九州初、佐伯市に「ひずみ計」設置 南海トラフ地震の前兆把握へ地下岩盤の伸縮観測【大分県】

地下550メートルに送り込まれる「ひずみ計」(銀色の棒状の装置)=18日、佐伯市蒲江猪串浦
ひずみ計設置場所

 南海トラフ地震の前兆を捉えるため、産業技術総合研究所(茨城県つくば市)は18日、地中のわずかな変化を把握する「ひずみ計」を佐伯市蒲江猪串浦に設置した。これまで東海から四国にかけて配置しており、九州では初めて。地下岩盤の伸び縮みを常時観測し、データを気象庁が活用する予定。産総研は「観測体制を強化することで、大きな地震の発生予測を目指したい」と期待している。

 「ひずみ計」は現在、産総研や気象庁などが静岡県以西の計39カ所で運用。日本列島が載る陸側のプレート(岩盤)と、その下に沈み込む海側のプレートの境目が、通常の地震よりはるかに遅い速度でずれ動く「ゆっくりすべり」による地殻変動を検知している。

 複数地点の観測データなどから、東海~九州沖の想定震源域内で通常と異なる滑りが起きたと判断した場合、気象庁が「南海トラフ地震臨時情報」を発表して巨大地震への注意を呼びかける。

 産総研によると、日向灘や豊後水道での滑りを確認するのに適している場所として佐伯市蒲江を選んだ。猪串小跡で昨年7月から掘削工事を進めた。深さ約550メートル、直径約12センチの穴に、ひずみ計(長さ約6.5メートル、直径約9センチ)を機械で下ろして固定した。

 検知するデータに問題がないかを検証した後、気象庁の観測網に加える。

 南海トラフ地震が発生した場合、同市蒲江の丸市尾浦では県内最大となる13.5メートルの津波が想定されている。

 設置作業に当たった産総研活断層・火山研究部門の板場智史主任研究員(46)は「地殻変動をより詳細に確かめられるようになる。まずは通常時にどのような変化をしているか調査していきたい」と話した。

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