福島県南相馬市原町の増山さん不明30年 家族「真相を知りたい」

ひとみさんの写真を見る一郎さん。行方不明になる1年前に成人式を迎えたひとみさんの写真は30年を過ぎてもきれいなまま残る

 福島県南相馬市原町区下北高平、元歯科医院助手兼事務員増山ひとみさん=当時(21)=が行方不明になってから、19日で丸30年が経過した。家族は手掛かりのない状況にやり切れない思いを抱えながら、長い月日を重ねてきた。

 南相馬署のこれまでの調べでは、増山さんは1994(平成6)年2月19日の午後1時10分ごろ、勤務していた同市原町区日の出町の歯科医院から軽乗用車で帰宅する途中に行方が分からなくなった。行方不明となった3週間後に結婚式を控えるなど、家出をするような事情はなかった。同署は事件や事故に巻き込まれた可能性もあるとして情報提供を求めている。

 父一郎さん(77)は「30年もたったと思えない。諦め半分でも、もしかしたら…という思いがある。うやむやで終わってしまうのは嫌だ」と複雑な心境を明かす。時間の経過につれて気持ちを表に出さないように振る舞うようになったが、「真相を知りたい」との願いは変わっていない。

 行方不明となった19日の朝、出勤前のひとみさんに当時入院中だった祖父に洗濯物を届けるよう頼んだのが、娘と最後に交わした会話だ。翌日に見つかったひとみさんの車には託した洗濯物や上着、かばんが置きっ放しだったという。「手掛かりがあれば気持ちも晴れるんだろうが、突然の出来事だったので整理がつかない。情報があれば寄せてほしい」と話している。

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