レスキュー隊員養成コース、兵庫県で女性初の修了 猪名川町消防本部の岡村理子さん 「性差の固定概念変えたい」

県内の消防本部から集い、救助科で研さんを積んだ岡村理子さん(中央)ら=三木市志染町御坂

 人命救助の最前線に立つレスキュー隊員を養成する県消防学校(兵庫県三木市)救助科を、昨年12月に女性消防士が初めて修了した。同県猪名川町消防本部の岡村理子さん(24)=伊丹市。過酷な災害現場を想定した22日間の訓練を終え、「求められる仕事を全力でやっていく」と表情を引き締める。(貝原加奈)

 県消防学校は、県内24の消防本部に所属する隊員の教育訓練を担い、現役消防士を対象に救急科や危険物科などの専科教育を実施している。救助科にこれまで女性の入校がなかった理由について、大谷啓仁副校長は「走ったり重い物を持ったりする訓練を女性がクリアするのが体力的に難しかったからでは」と話す。

 伊丹市出身の岡村さんは兄の影響で幼稚園の頃からスキーのモーグルにのめり込み、中学生まで五輪選手を夢見て全国各地の大会に出場した。高校卒業後は消防士の父や兄の背中を追うように、猪名川町初の女性消防士になった。

 モーグルで鍛えた足腰に自信はあったが、腕は細く入庁時の握力は15キロほどだった。「女性やからできないと思われたくない」。ロープ上りや腕立て伏せ、資機材運びなどの訓練に必死で食らいついた。

 町消防本部の職員は40人ほど。人手が限られる中、「何でも任せてもらえるように」と潜水士や小型クレーンの資格などを取得。4年目、正式に救助隊員として認められ、先輩の勧めもあり現場のリーダーを育てる救助科へと飛び込んだ。

 訓練では、裏山が崩れて数人が下敷きになった▽地下の工事現場にいた作業員と連絡が取れない-など、緊急消防援助隊としての出動を想定。塀に立てかけたハシゴからロープをたらし、くくりつけた担架を引き上げる救出方法は初めてだった。戸惑い、未熟さを実感し、父親に悔しさをこぼすと、「みんなを鼓舞するなど、与えられた仕事を全力ですればいい」と背中を押された。

 「男性がいないと成り立たない仕事だと日々痛感する。でも、女性には無理という固定概念を変えたい」。修了後の先月、能登半島地震の被災地に向かう先輩隊員を送り出した。「いつでも動けるように準備しておくだけ」。いつか来る日に備え、鍛錬を続ける。

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