「福島ダービー」譲らず 新戦力、攻守に躍動 収穫と課題いざ開幕へ

試合後、横断幕を手にサポーターの声援に感謝するいわきと福島Uの選手

 Jヴィレッジスタジアム(広野町)で18日に行われたJ2いわきFCとJ3福島ユナイテッドFC(福島U)の「2024福島ダービー」は、昨季から顔触れの変わった両者にとって今季を占う「試金石」の場となった。双方の選手、指揮官は県内に拠点を置くライバルとの実戦で得た収穫と課題を糧に、24日の開幕戦に向けてチームづくりの総仕上げを図る。

 「いわきFCの圧力の中で引き分けに持っていけた。収穫の多いゲーム」。福島Uを今季から率いる寺田周平監督(48)は新戦力7人を先発に起用した。カテゴリーが一つ上の相手に2度追い付き、ドローに持ち込んだ手応えを語った。

 前半はいわきの速いプレスに苦しんだが、後半は選手間の距離を修正。ボールを持つ時間を増やし、昨季から在籍するFW塩浜遼(23)、J1川崎フロンターレから迎えたMF大関友翔(19)らの突破力を武器に攻勢に出た。

 大宮アルディージャから加入のFW矢島輝一(28)が得点するなど課題の攻撃力に上積みを感じさせた。目標のJ2昇格には得点を狙う姿勢が不可欠だ。指揮官は「昇格には勝利、勝利にはゴールが必要。あと1週間で点を奪うトレーニングを積む」と話した。

 一方、昨季途中から指揮するいわきFCの田村雄三監督(41)は「新たな課題が分かった。開幕前にユナイテッド(福島U)と戦えて良かった」と注目の一戦を総括した。

 開幕戦で当たる水戸ホーリーホックを意識した布陣を敷いた。水戸同様にDF4人を並べる福島Uに対し前の選手3人が相手守備陣の間に入り、両サイドのスペースを攻めた。昨季から主力のMF山口大輝(26)の先制点もこの形で福島Uの守備を崩した。

 後半はベンチから新戦力を順次投入。ただ、福島Uの修正に対応できず、ボール保持者に重圧をかけきれない場面が増えた。DF嵯峨理久(25)は終盤に追い付かれる結果に「ダービーで勝ちきりたかった。悔しい」と勝利への執着心をあらわにした。

 2年目のJ2はJ1昇格のプレーオフ圏内となる6位以上を狙う。田村監督は「相手の出方を含めて選手がピッチで判断できるように積み上げる。選手に解決策を提示していかないといけない」と本番に向け、修正を誓った。

 

■スタンド赤一色サポーター、選手鼓舞

 会場には1年半ぶりの両者の勝負を見届けようと、3588人が詰めかけた。ともに赤色をチームカラーとするいわきと福島Uのサポーターがスタンドを赤く染め、選手を鼓舞した。試合後は選手が横断幕を手に声援への感謝を伝えた。

 福島Uを応援する福島市の会社員伊藤恭子さん(44)は選手の戦いから今季への期待が高まった。J2とJ3で舞台の異なるライバルとの一戦を「エンターテインメントとしても楽しめた」と満足げだった。

 福島市の会社員伹野智史さん(29)はいわきFCを日本フットボールリーグ時代から応援する。かつてホームだった会場での観戦を満喫した。「選手との距離が近くて楽しめた。一つでも多く勝ち、順位を上げてほしい」と願った。

 選手も聖地での一戦に格別な思いで望んだ。いわきFCのFW加瀬直輝(23)は尚志高出身。東日本大震災からの復興をサッカーで励まそうとする同校で技を磨いた。「震災直後の様子も知っている。Jヴィレッジで試合できてうれしい」と語った。

 

■両チーム、アウェーで24日初戦

 今季の明治安田Jリーグは23日に開幕する。いわきFC、福島Uとも24日にアウェーで初戦を迎える。

 いわきFCは24日午後2時から水戸市のケーズデンキスタジアム水戸で水戸ホーリーホックと戦う。ホーム初戦は3月3日午後1時から。いわき市のハワイアンズスタジアムいわき(いわきグリーンフィールド)にファジアーノ岡山を迎える。

 福島Uは24日午後3時から、岐阜市の岐阜メモリアルセンター長良川競技場でFC岐阜と戦う。本拠地の福島市のとうほう・みんなのスタジアム(あづま陸上競技場)でのリーグ初戦は3月17日午後2時から。松本山雅FCと対戦する。

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