蔵王の樹氷、もう解けた 気温上昇、木の幹あらわ

暖冬の影響で雪氷が解けた樹氷原=山形市・蔵王ロープウェイ地蔵山頂駅周辺

 山形、宮城の両県にまたがる蔵王連峰の冬の風物詩「樹氷」が今季、暖冬の影響でほぼ姿を消した。例年ならばシーズン半ばの時期だが、気温の上昇でアオモリトドマツに付着した雪氷が解け、木の幹があらわになっている。

 標高1600メートルを超える蔵王ロープウェイ地蔵山頂駅に設置された温度計は18日午後3時現在、「1.3度」を指していた。樹氷の骨格ともいえる幹がむき出しとなり、枝先から水滴がしたたり落ちていた。タイから訪れたという4人組の女性客は「またいつか来たい」と樹氷に出合えず、がっかりした様子だった。

 蔵王ロープウェイによると、山形地方気象台の全観測地点で今年の最高気温となった14日に崩れ始め、16日朝には大部分で樹氷が崩れているのを確認した。例年の見頃は2月いっぱいといい「年を追うごとに短縮傾向ではあったが、それを上回る異常事態」と漏らす。

 樹氷研究の第一人者、山形大の柳沢文孝名誉教授は、樹氷が壊れた要因に暖気の流入を挙げる。南米ペルー沖の海面水温が上がる「エルニーニョ現象」によって南岸低気圧が頻発し、「南から暖かい空気が流れ込み、樹氷の形成を阻害した」と解説する。

 一方、麓にある蔵王ロープウェイ蔵王山麓駅では、訪日客らが長い列をつくった。職員が「樹氷は見学できない」と案内する中、待ち時間は最長90分に。蔵王温泉観光協会によると、外国人観光客は雪そのものを目当てにして訪れる人が多く、客入りは新型コロナウイルス禍前か、それ以上という。同協会の岡崎善七会長は「樹氷以外にも温泉、スキー、グルメもある。蔵王を挙げてお客さまをもてなしたい」と語った。

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