「立春」が基準の暦、いくつわかる?知っていると得する“お天気カレンダー”を気象予報士が解説

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2月4日は立春でした。暦の上では春が始まる日…と覚えている人が多いと思いますが、かつてはこの立春が「1年の始まり」でもありました。

そのため、今でも立春を基準とした暦が複数残っているのをご存じでしょうか。

今回は、気象予報士・防災士・野菜ソムリエとして活躍する植松愛実さんに、昔の人の知恵が詰まった“お天気カレンダー”について教えてもらいます。

夏も近づく…「八十八夜」

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小学校の音楽の教科書にも載っている「茶摘み」の歌でもおなじみ、立春から数えて88日目にあたる八十八夜。例年5月2日ですが、今年2024年はうるう年のため5月1日になります。

歌の中で八十八夜に茶摘みをしているのは、その頃になると朝晩の冷え込みが弱くなり、茶の大敵である霜が降りにくくなるため。つまり、立春から88日目は気温の傾向が変わる境目なのです。

春は朝晩と日中の気温差が大きいため脱ぎ着しやすい服装で調節する必要がありますが、八十八夜を超えた頃からそういった必要がなくなってきて、タンスの衣服を整理するタイミングの目安にもなります。

どんよりした季節が近づく…「入梅」

「入梅(にゅうばい)」は文字通り「梅雨入りする頃」を意味していて、かつては立春から135日目(6月11日頃)とされてきました。

現在は太陽の位置を基準に国立天文台が定めていますが、時期は変わらず、今年2024年は6月10日です。

梅雨入りの発表は現在では気象庁が行っていますが、その平年日(直近30年間の平均)は近畿で6月6日、関東甲信で6月7日、北陸で6月11日と、いずれもだいたい入梅の頃です。

つまり立春から135日くらい経つと、じめじめした日が多くなって降水量が増えるということ。

おうちのカビ対策や大雨災害の備えをする目安になりますね。

現代でも防災訓練をする日…「二百十日」

防災訓練をする日、と言えば、9月1日の「防災の日」を思い浮かべる人が多いのでは。

じつは9月1日は例年、立春から数えて210日目の「二百十日(にひゃくとおか)」という暦に当たります(今年2024年はうるう年のため8月31日が「二百十日」ですが、「防災の日」は9月1日で変わりません)。

9月1日は関東大震災の発生日として知られていますが、1960年に「防災の日」が定められた直接のきっかけは、前年の1959年9月に伊勢湾台風によって甚大な被害が出たこと。

この時期は台風が襲来しやすいだけでなく、稲を中心とした農作物にとっても重要なタイミングだったため、昔からとくに災害に対する備えが重視されてきました。

現代でも8月から9月にまたがるこの時期は台風の発生が多く、日本への接近・上陸ももっとも多くなるため、いつも以上に備えが必要です。

負担なく暮らしが便利になる“お天気カレンダー”

日々の生活を便利にするために1年中、気温や降水量をこまめに調べて活用しようとしても、結局手間が増えるだけ。

でも、「八十八夜」など立春を基準にした超ざっくりな“お天気カレンダー”を知っていれば、わざわざ細かいデータを調べなくても、1年のなかでとくに気をつけるべきタイミングを把握することができます。

昔の人の知恵に感謝しつつ、現代に生きる私たちもぜひ活用していきたいですね。

■執筆/植松愛実さん
気象予報士と出張料理人の両面で活動中。気象・防災に関するヒントのほか、野菜ソムリエ・食育インストラクターとしておいしい食材のおいしい食べ方を発信中。インスタグラムは@megumi_kitchen_and_atelier。
編集/サンキュ!編集部

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