重量挙げ競技環境再建、珠洲で奮闘 指導者の釜石出身・浅田さん

トロフィーと支援物資が並ぶ浅田久美さんの自宅。逆境を越え、選手育成に奮闘する=珠洲市(報道部・高橋康撮影)

 【石川県珠洲(すず)市で報道部・稲垣大助】選手育成、逆境でも踏ん張る。重量挙げ女子の日本代表元監督で、珠洲市を拠点に指導者を務める浅田(旧姓・長谷場)久美さん(60)=岩手県釜石市出身=は能登半島地震で甚大な被害を受けた競技環境の立て直しに奮闘している。避難所に身を寄せる選手のために自主練習メニューを組み立て、隣県での合宿も企画。これまで培った人脈に励まされながら「珠洲から世界へ」の旗を守り続ける。

 「練習ができないことで、世界に通用する人材の能力を台無しにしたくない。環境を整えることが私の役割なんです」。日の丸を背負った時代のトロフィーが並ぶ珠洲市の自宅和室で、思いを語った。全国から届いたジャージーやテーピング、無洗米などの支援物資が室内の床を埋める。

 夫の浩伸さん(53)と釜石市に帰省中の元日、大地震が起きた。車中泊を経て、自宅にたどり着いたのは3日後。倒壊は免れたが、瓦屋根が壊れ、室内はぐちゃぐちゃだった。その後の雨や雪で雨漏りも。屋根にブルーシートをかけて何とかしのいでいる。

 バーベルを握る実戦的な練習をするため、11日以降、隣県で2度の合宿を実施した。大会に向けて遠征を続けるには多額の費用が要る。頭を痛めていたところ、被災地支援に入った北上市の医療用ガス製造供給、北良の笠井健社長(49)が、クラウドファンディングによる資金調達を申し出てくれた。

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