天文台のベテラン職員が「世界初」の快挙 パンスターズ彗星「初回帰」の観測に世界で初めて成功

鳥取県鳥取市にある公開天文台「さじアストロパーク」は、パンスターズ彗星「初回帰」の観測に世界で初めて成功したと発表しました。成功の裏には、宇宙に魅せられたベテラン男性職員の存在がありました。

国内有数の公開天文台、鳥取市佐治町にある「さじアストロパーク」。

鳥取市さじアストロパーク 織部隆明さん
「この速報の中に、さじアストロパークで観測したパンスターズ彗星が、今回、帰ってきた時の世界初観測として捉えましたよということが書いてあります」

さじアストロパークのベテラン職員、織部隆明さん(52)。

このほど、ある世界初の快挙を成し遂げました。

それは、2018年に発見された、太陽の周りを回る彗星「パンスターズ彗星」。

約5年の周期で回るこの彗星が再び太陽に近づいた「初回帰」を、2023年11月、世界で初めて観測することに成功したんです。

鳥取市さじアストロパーク 織部隆明さん
「正式に認定されたということで、ちょっとほっとしました」

多くの彗星は太陽の周りを長い楕円軌道で移動していて、太陽に近いわずかな期間にだけ観測されるため、いつ現れるか予想が難しく、行方不明になる場合もあるということです。

織部さんは、2023年6月から、月に3、4回のペースで、望遠鏡につけたデジカメで撮影を続けましたが、11月になってもその姿を捉えることはできませんでした。

しかし…

鳥取市さじアストロパーク 織部隆明さん
「もしかしたら、このまま写らないかもしれないと、思い始めたぐらいで急に写ったという感じです」

半ばあきらめかけていた織部さんですが、11月15日、ついにパンスターズ彗星らしき星を撮影したのです。

鳥取市さじアストロパーク 織部隆明さん
「別の天体と間違えることがたまにありまして、ちょっとその不安が若干あったのと、多分動きから見て間違いないんじゃないかという期待と」

その後、国際天文学連合小惑星センターに画像を送付。

そして2024年1月26日、パンスターズ彗星の初回帰の世界初観測であることが発表されました。

これにより、彗星の軌道予想を今後より正確に計算できるようになるということです。

ところで、さじアストロパークの望遠鏡は103センチと大型ですが、それよりも大きな研究専門の望遠鏡が国内外にはたくさんあります。

世界中のライバルが初観測を競う中、なぜ織部さんが最初に見つけることができたのでしょうか?

鳥取市さじアストロパーク 織部隆明さん
「鳥取県は星取県で売ってるぐらい星空がきれいですので、やっぱりきれいな星空と大きな望遠鏡を使えば、世界の天文台と勝負ができると」

鳥取の澄んだ空が初観測を可能にしたとのこと。

それともう1つ…。

鳥取市さじアストロパーク 織部隆明さん
「宇宙の広さというものは本当に想像を絶する広さがあって。そういうところでは非常に興味が尽きないですね」

子どものころから変わらない、織部さんの宇宙への興味。そして、多くの人に宇宙の神秘を知ってほしいという情熱です。

小さな町の天文台の世界への挑戦。

織部さんはこれからも世界を驚かす発見がしたいと話します。

鳥取市さじアストロパーク 織部隆明さん
「(深夜早朝の観測で)ちょっと寝不足でつらい時もあるんですけど、そういうことを乗り越えて、(世界発信の)活動をぜひやりたいということで続けています」

© 株式会社山陰放送