被災に負けず準備開始 当番町で山車組み立て 伏木曳山祭開催決定一夜明け

山車の組み立てを進める本町の曳き子=高岡市伏木本町

 毎年5月に高岡市伏木地区で開かれる「伏木曳山(ひきやま)祭(まつり)」の開催決定から一夜明けた19日、全7基のうち6基の山車(やま)が納められている伏木本町の山倉で祭りの準備作業が始まった。今年の当番町を務める「本町」が山車の組み立てに取り掛かり、伏木で被災した住民自身も「伏木のまちに元気を」と安全な巡行へ気合を入れた。

 祭りの方針が示されたことを受け、同日夜、本町の曳き子10人が山倉に集った。山車は、囃子(はやし)を奏でる楽屋の新調のため、楽屋を山車の土台部分から取り外した状態で保管していた。楽屋の部材の取り付けや、楽屋を土台部分へ取り付けるための準備を進めた。

 余震に備えて材料を重ねて置かないなど、安全面に気を配りながら作業した。

 祭り関係者は3日、山倉の点検を行った。山車に目立った損傷はなかったが、山倉の部品などに計約30カ所の破損を確認した。3月末までに修理を行う。

 祭りの会場となる伏木地区は液状化現象の影響で住宅の傾きや道路の隆起、電柱の沈下といった被害があった。実行委は資金や安全の確保に向け、市内外から支援を募り、地盤調査を実施する。今年の伏木曳山祭は5月17、18日の開催予定で、通常規模の開催を目指す。

  ●復興願い「スイッチ」

 会社員川端将大さん(25)は、山車の四隅に立ち巡行の指示を出す「拍子木」のまとめ役を務める。地震で伏木本町の実家は建具がゆがみ、扉が開かなくなるなどの被害があった。

 川端さんは祭りの方針が決まるまで開催は半分諦めていたとし、「開催するのはうれしいが、どこまでやれるか、準備の遅れをどう取り戻すかという不安がある」と複雑な心境を語る。

 「ふぬけた気持ちのスイッチを入れることは難しいが目いっぱいやる。『復興するぞ』と思いを込め、総代をはじめみんなの気持ちをもり立てたい」と話す。

 総代の鶴谷卓哉さん(41)も自宅の屋根は瓦が落ち、ブルーシートが掛かったままだ。「山倉でみんなと顔を合わせることができてほっとした。安全に祭りを終えることを前提に、楽しみにしている人に活気ある姿を見せ、元気を出してほしい」と力を込める。

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