今年の日章学園は高岡伶颯だけにあらず。左利きのドリブラー南創太は巧い選手から恐い選手に

今年の日章学園を牽引するのは、昨秋のU-17ワールドカップでブレイクした高岡伶颯(2年)だろう。すでに鹿島や浦和の練習にも参加しており、九州だけではなく全国区で目玉になる逸材だ。

しかし、日章学園にはもうひとり注目すべきタレントがいる。左利きのドリブラー南創太(2年)だ。

独特の間合いでボールを運び、緩急を付けた仕掛けで抜き去る。タッチが細かく、相手DFも迂闊に飛び込めない。食いついてくればボールを運び、身構えているのであればラストパスやシュートで決定的な仕事を果たす。「Jクラブから興味を示してもらえるかもしれない」。原啓太監督がこう評するほど、目覚ましい成長を遂げている。

振り返れば、昨年の今頃はチームでそこまで目立ってはいなかった。技術力の高さは目をひく一方で、まだ線が細く、当たり負けする場面が散見。得意のドリブル以外では存在感を示せず、今のようにシュートやパスの精度が高かったわけでもなく、判断も今ひとつだった。

そもそも昨季の前半はBチームでプレーをしており、トップチームへ昇格したのは昨年9月。周りの2年生と比べて何が足りないかを徹底的に突き詰めて、フィジカルの強化に励んでステップアップを勝ち取った。

「一番足りなかったのはフィジカル。体格もそうだし、スタミナやスプリントの回数が少なかったので、走り込んだり、筋力トレーニングを続けて、少しずつ身体ができ上がってきた」

その結果、プレーにも余裕が生まれ、技術を発揮できるようになった。徐々にAチームでチャンスを掴み、自信をどんどん深めていった。ただ、身体ができ上がっただけでは結果は残せない。ドリブル一辺倒だったスタイルを見直し、状況に応じて適切にプレーを判断できるようになったのは大きい。

ラストパスやシュートで脅かせるようになったため、相手もドリブル以外のプレーを警戒。間合いを詰めてくるようになり、より独力で局面を打開するシーンが増えた。巧い選手から恐い選手に変貌を遂げた。本人も成長を実感していると話す。

「ドリブルからのクロスやシュート。ここは負けたくない。絶対にひとりは剥がすつもりでいるけど、周りを活かすか深く潜っていくか。(柔軟に対応できるのも)自分の持ち味になった」

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昨年12月8日に行なわれた京都U-18とのプレミアリーグ参入プレーオフ1回戦(3-4)では、先制点をマーク。得意の左足でミドルシュートを叩き込むなど、大事な試合でゴールを奪えるようになったのは成長の証だ。

2月17日から開催されている九州高等学校(U-17)サッカー大会でも存在感を発揮。エースの高岡が高校選抜の活動で予選リーグを欠場したなかで、南は3戦3発の大暴れ。

決勝トーナメントに入っても19日に行なわれた準々決勝の鹿児島城西戦(1-0)で利き足ではない右足で決勝点を奪い、同日の準決勝では大津に1-6の大敗を喫したものの、終了間際に一矢報いるゴールを左足で冷静に決めた。

原監督も南のプレーに太鼓判を押しており、さらなるステップアップも不可能ではないと見ている。

「上のステージを目ざしてほしい。決定的な仕事もできるようになってきた。昔からドリブルは良かったけど、最後の質が課題だった。ラストパスやシュートがダメだったけど、自主練習でこだわるようにも話してきたんです。

上に行くんだったら、最後の局面でパンチがあるとか、数字が残せることが大事。この半年ぐらい居残りで高岡と一緒にカットインシュートも練習していたので、ようやく毎試合、点が取れる感じになってきた」

右肩上がりで成長を続けるドリブラーの可能性は無限大。今大会にはJクラブのスカウトが多く訪れており、目に止まったとしてもおかしくない。守備の課題などはあるが、武器を磨き続ければ、高卒でのJ入りも決して夢物語ではないはずだ。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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