桜駆け足、対応急げ 福島県内 暖冬で開花早まる? 誘客、交通規制調整

暖冬の影響で例年よりも10日から2週間早く生育が進み、つぼみが膨らみ始めた河津桜=19日午後1時40分ごろ、福島市・花見山公園

 富岡町の夜の森地区では恒例の「桜まつり」が4月6、7の両日催される。町や関係機関でつくる実行委員会は開花予想を受け、開催前に大勢の見物客が来町すると想定。3月24日から会場の夜の森公園に飲食などの出店を並べる対応を決め、出店者を募っている。

 夜の森の桜は復興へ歩む町民の心の拠り所だ。まつりは東日本大震災と東京電力福島第1原発事故による中断を経て近年は旧富岡二中周辺で催してきた。避難指示解除後に進めた夜の森公園の整備や美化にめどが立ち、久びさに会場を元の公園に戻す。町産業振興課長の原田徳仁さんは「多くの人に夜の森の桜を見てほしい」と呼びかけている。

 日本三大桜の一つ「三春滝桜」が自慢の三春町も早めの開花を見込み、準備に力を入れている。

 町は例年3月末~4月上旬を観光対応期間としている。昨春は史上最も早い3月27日に開花。数日は警備や誘導の要員を手配しきれず町職員も対応した。シャトルバス運行や警備の業務委託はこれからだが、天候に目配りしながら適切な期間を見極めている。町産業課は「より円滑な受け入れを目指す」と意気込む。

 会津若松市の鶴ケ城公園では「鶴ケ城さくらまつり」は4月3日から5月6日まで開催予定だ。園を管理する会津若松観光ビューローは桜の開花を4月3日、満開は8日頃と見込む。恒例の関連行事「會津十楽春の陣」を3月30日に始める他、植木市なども前倒す方向で調整している。開花状況次第でライトアップ期間もずらす場合もある。

 旅行会社も桜の行方を注視する。鏡石町のジャパン旅行サービスは台湾の旅行客向けに観桜プランを企画し、4月中旬に花見を一つの目玉とした客を迎える。ただ、4月中旬には県内では桜が散っている可能性があるとメールで客に伝えた。会長で県旅行業協会長を務める菊地洋さんは「開花が年々早まり、調整が大変だ」と苦労を語る。

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 いわき市の常磐共同火力勿来発電所敷地内にある「河津桜」は15日に例年より3週間ほど早く開花した。総務グループリーダー大河原崇さんによると、天候次第では2月末にも見頃となる。「美しい花が咲き、例年より早い春を多くの人に感じてほしい」と話す。

 福島市の花見山公園でも河津桜が例年に比べて10日~2週間ほど早くつぼみが膨らみ始めた。周辺の交通規制期間も暖冬を受けてコロナ禍前より約1週間早め、3月23~4月14日としている。桜を長く観賞してもらおうと5年前から遅咲きの桜100本を植えている。園主・阿部一夫さんの長男の晃治さんは「多彩な桜を楽しんでもらいたい」と話している。

 暖冬の影響で今春の桜は開花が早まりそうだ。日本気象協会が19日に発表した開花予想は福島市が平年より4日、東北全体は2~6日早い。名所の多い県内では花見は春の観光の目玉で、見頃が祭りや行事と重なるかは客足を左右する。関係者は記録的な早さで花開いた昨春を教訓に、天候や予想をにらみつつ、受け入れ体制やもてなしを工夫。駆け足で迫る桜前線への備えを急ピッチで進めている。

■21日、22日は例年並みの気温 2月下旬から再び上昇

 福島地方気象台によると県内では21、22の両日は雪が降るなど例年並みの気温に下がるが、2月下旬から3月にかけて気温が再び上がる見通し。気象庁によると、向こう1カ月の東北地方の気温は平年よりも高くなる予想。

桜まつりに向け、夜の森公園の整地など準備を進める関係者=19日、富岡町

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