被爆体験者訴訟9月判決 原告「早く全員に手帳を」 長崎地裁

横断幕を掲げて裁判所に入る原告ら=長崎地裁前

 国の指定地域外で長崎原爆に遭い、被爆者と認められていない「被爆体験者」44人が、長崎県と長崎市に被爆者健康手帳の交付を求めた訴訟の口頭弁論が19日、長崎地裁(松永晋介裁判長)であった。原告団長の岩永千代子さん(88)が意見陳述し結審した。判決は9月9日。
 岩永団長は「被爆体験者」問題の経緯や原告の仲間から託された思いを語り「私たちには時間がありません。一刻も早く全員に手帳を交付してください」と訴えた。
 原告側弁護団は被爆者援護法に定められた被爆者認定要件の解釈や過去の被爆体験者訴訟との立証方法の違いなど、これまでの主張を総括。「被爆者の解釈や認定について広島と長崎で違っていいはずがない」と述べた。
 被告側は、今回の訴訟とこれまでの訴訟は違いがなく「異なる判断をすべき事情はない」とし、請求棄却を求めた。
 被爆体験者訴訟は第1陣が2007年、第2陣が11年に提訴し、いずれも最高裁で17年と19年に敗訴が確定。その原告の一部44人が長崎地裁に再提訴した。広島の援護区域外で原爆に遭った住民による「黒い雨」訴訟で21年、原告全員を被爆者と認めた広島高裁判決が確定。昨年から被爆者認定の新たな基準が運用されているが、長崎の被爆体験者は適用外とされている。

© 株式会社長崎新聞社