人気料理家・まるみキッチン、娘が難病に。双子で生まれた三女のうんちが白っぽい!不安が日に日に大きくなって・・・【胆道閉鎖症体験談・医師監修】

生後2日目に双子が初対面!凪紗ちゃん(写真左)と伊風紀ちゃん(写真右)。このとき凪紗ちゃんは怒って不機嫌だったのだとか。

料理研究家・まるみキッチンこと三浦健吾さん(31歳)は、大阪府で3歳の女の子と、まもなく1歳になる双子の女の子、妻の5人で暮らしています。「やる気1%でもできる」レシピをSNSで次々に発表して話題のまるみキッチンさんですが、2023年2月に双子で生まれた三女の伊風紀(いぶき)ちゃんは、生後1カ月のときに指定難病である胆道閉鎖症と診断され、治療を続けていると言います。伊風紀ちゃんの症状に気づいたのは「うんちが白っぽかったから・・・」。健吾さんと妻の未紗紀さんに三女の病気のことを聞きました。
全2回のインタビューの1回目です。

うんちやおしっこの色がカギ!1万人に1人の胆道閉鎖症の早期発見、治療を【小児科医】

出産翌日からうんちの色が気になった

双子が生まれた翌月、長女・未桜ちゃんの入園式での三浦さん家族の様子。

健吾さんと未沙紀さんは、25歳のときに結婚、そして2020年4月には長女の未桜(みお)ちゃんが誕生しました。
結婚したころから子どもは2人欲しい、と話していたそうです。その約2年後、未紗紀さんの2回目の妊娠が双子だとわかったのは、妊娠5週のころのことだったとか。

「双子だとわかったときには、とっても驚きましたがうれしかったです。三人の父親になるのか、と緊張したことも覚えています。
でも、長女の妊娠のときよりも妻のつわりがひどかったことや、双子の妊娠はハイリスクだと聞いたことがあり、念のため胎児ドッククリニックで先天性疾患などの検査もしてもらいました」(健吾さん)

「性別も含めいろいろわかったほうが、準備や心構えもできるし、と考えて検査を受けました。そのときには、おなかの赤ちゃんにはほぼ何も心配ないでしょう、という診断でした」(未紗紀さん)

多胎妊娠の場合、妊娠28〜34週ごろから管理入院になる場合もありますが、未紗紀さんの妊娠中の経過はとても良好で、管理入院にはならずにすみました。そして、妊娠37週の2023年2月中旬、予定帝王切開で女の子の双子を出産しました。

「二女の凪紗(なぎさ)は体重2330g、身長46cm、三女の伊風紀は体重2404g、身長47.5cmで生まれました。体重が2500g以下だったためにNICUに入りましたが、それは2日間だけでした。
2人とも経過がよかったので3日目からは一緒に過ごせるようになり、産後10日目に3人一緒に退院しました」(未紗紀さん)

入院中の双子の様子は順調でしたが、未紗紀さんには一つ気になることがありました。それは、伊風紀ちゃんのうんちの色です。

「生後すぐから、伊風紀のうんちの色が白っぽかったんです。すぐに看護師さんにうんちの紙おむつを見せて『うんちが白いんですけど、問題ないでしょうか?』と聞きました。ほかの看護師さんにも確認してくれて『これはミルクの成分ですね』と言われました。

そういえば長女が乳幼児のときにも、ミルクを変えたらうんちの色がうぐいす色っぽくなったことがあったんです。長女のときは小児科で血液検査をした結果、『ミルクの成分で問題ない』と言われました。だから、三女のうんちも『やっぱりミルクの色だよね』とそのときは納得したんです」(未紗紀さん)

1カ月健診では黄疸も含め、指摘されることはなにもなく・・・

産後に退院してからの長女の未桜ちゃんと双子ちゃん、一緒に並んでパチリ。一番右の伊風紀ちゃんの肌色は少しくすんでいるように見えます。

未紗紀さんが伊風紀ちゃんのうんちの色を心配したのは、長女のうんちがうぐいす色だったときにうんちからわかる病気について調べたことがあったからでした。

「長女が赤ちゃんのときのお世話の経験から、母子健康手帳の『便色チェックシート』を使って『うんちの色が白っぽいと注意が必要』だということは知っていたし、産院でもらう冊子にも胆道閉鎖症のことが書いてありました。そして出産した病院を退院してから1カ月健診までの間、伊風紀のうんちの色はだんだん白さが増していくように感じていました。一度は『ミルクの色だ』と納得しつつも、ずっと気になり続けていました」(未紗紀さん)

肝臓で作られた胆汁(消化液)が腸管へ流れていく通り道が「胆道」です。「胆道閉鎖症」は、この胆道がなんらかの原因でふさがれてしまう病気で、赤ちゃん約1万人に1人が罹患(りかん)するといわれています。原因はわかっていません。
胆道がふさがれると、胆汁が肝臓の中にたまって肝臓の組織を破壊します。それにより肝機能障害などを発症し、放置しておくと肝硬変から死に至る危険性もあります。

「うんち以外に、体重の増え方も気になりました。三女のほうが大きく生まれたのに、体重の増え方がゆるやかで、少し小さく生まれた二女のほうが大きくなっていました。1カ月健診で、うんちの色のことや体重のことも相談したけれど・・・『問題ないです。ちょっと栄養がたりていないから様子を見ましょう』と言われるくらいで、黄疸(おうだん)が出ていると指摘もされませんでした。今振り返ると、あのときもっと食い下がって聞いていれば、と・・・」(未紗紀さん)

「長女も二女も色白なんですが、三女だけ少し肌の色が濃かったんです。二卵性の双子ということもあり、そのときは『三女はぼくに似たのかな』と話していました。でも今になって写真を見返すと、明らかに三女だけ肌の色がくすんでいることがわかります」(健吾さん)

胆道閉鎖症のサインは、新生児から3カ月ごろに見られる、うんちの色の変化です。健康な赤ちゃんのうんちは黄色っぽいですが、これは胆汁の成分であるビリルビンの色。胆道閉鎖症で胆汁が流れなくなると、うんちがしだいに白っぽくなってきます。そのほか、皮膚や白目に黄疸が見られる症状があります。

小児科を受診すると緊急搬送に。すぐに手術が必要な状態だった

手術後の伊風紀ちゃん。安心できるように、おしゃぶりをくわえています。

双子を母乳とミルクの混合で育てていた未紗紀さん。双子の二女・凪紗ちゃんと同じタイミングで同じ量の同じ種類のミルクを飲んでいるのに、三女の伊風紀ちゃんのうんちだけが白く、体重も増えないことを「やっぱりおかしい」と感じていました。

「1カ月健診を過ぎてから、三女は飲んだミルクをよく吐き出すようになりました。そこで、近所の小児科を受診したんです。小児科の先生は三女を見てすぐに『肌が黒いですね。目も黄色いし、すぐに総合病院にかかってください』と。嫌な予感が的中してしまいました。そこからすぐ、三女は生まれた総合病院に搬送されました。しかし、その総合病院では精密な血液検査ができないとのことで、さらに大阪母子医療センターに搬送されることになりました」(未紗紀さん)」

「その前の晩、妻が『健診でも問題ないって言われたけど、やっぱり気になるから小児科に行くね』と言って翌朝出かけ、僕は仕事で調理や撮影をしながら連絡を待っていました。妻から『精密検査が必要だから総合病院に搬送されることになった』と連絡が来たと思ったら、その次には『手術が必要だから緊急入院になった』と連絡が。
まさか、そんな大変なことになるとは思ってもみませんでした。その夜、大阪母子医療センターに行って、医師から病気や手術についての説明を受け、『胆道閉鎖症の可能性があるので、今日から明日にかけてより詳しい検査をしましょう』ということでまずは検査を行うことになりました」(健吾さん)

「翌日、検査後の医師からの説明は『精密検査をしたところ、血中の直接ビリルビンの値が通常の20倍ほどになっていて、肝臓に負担がかかっています。さらに、十二指腸への胆汁排泄も非常に少ない結果でした。肌の色も明らかに黄ぐすみがある。胆道閉鎖症かどうかは開腹してみないとわからないし、もしかするとほかの病気かもしれないけれど、数値が高いのは事実なので、明日手術しましょう』というものでした。

『開腹手術をして何もなければそのままおなかを閉じます。胆道閉鎖症だった場合は手術を続行し、葛西手術を行います』と説明を受けました」(未紗紀さん)

葛西手術とは、閉鎖している胆管を切除して、肝臓側の断端を腸管でおおうようにつなぎ合わせる手術(肝門部腸吻合術)のことです。生後2カ月以内に手術を行うほうが望ましいため、早急に手術を行う必要があり、手術日は4月12日に決まりました。

「病名は知っていたものの、病気や治療方法についてはなんの知識もなかったので、ただ医師の説明を聞いて『はい、はい』と返事をするだけしかできなくて。状況を飲み込もうとすることで精いっぱいでした。

生後2カ月以内の手術にギリギリ間に合った、という気持ちと、産後すぐにも、そして1カ月健診でも相談したのに、と残念な気持ちとがぐちゃぐちゃになり、心配ばかりでした」(未紗紀さん)

おなかをあけたところ「胆道閉鎖症」と診断。葛西手術が行なわれた

伊風紀ちゃんが退院してから、家族でお食い初めのお祝いをしました。

そして伊風紀ちゃんの手術の日。健吾さんと未紗紀さんは、長女と二女を健吾さんの両親に預け、伊風紀ちゃんの病院へ。

「手術は朝9時から開始し、おなかをあけて病気がわかって葛西手術を行う場合は連絡する、と言われてPHSを渡されていました。手術を受ける親族の待機室はとくになく、入院患者の家族などが使う談話室で、ひたすら手術の経過を待っていました。

でも、昼になっても電話はありません。『これはきっと葛西手術になったんだな』と覚悟して、成功を祈って妻と2人でさらに待ち続けました。夕方になってやっと手術終了の連絡が。8時間にもなる手術でした」(健吾さん)

伊風紀ちゃんの葛西手術について、その後、三浦夫妻は医師からの説明を受けます。

「生後2カ月にもならない娘が8時間もの手術に耐えたんだと思ったら、涙が出ました。手術でおなかをあけてみたら、三女の胆管は完全に封鎖されている状態だったらしいんです。そこで、胆管を取って、肝臓と小腸をつなげる葛西手術を行った、という説明でした」(未紗紀さん)

「葛西手術をした子の1/3は術後にビリルビンの値が下がって、長期間移植をせずに過ごせる、1/3は術後にビリルビンの値がいったんは下がるけど数年以内に移植が必要、1/3は術後にビリルビンの値が下がらずに早期に移植が必要。つまり、2/3は少なくともいったんビリルビンの値が下がって肝臓への負担が少なくなる、という説明もありました。
ただ伊風紀がその2/3に入ったとしても、手術部が感染症を起こす胆管炎になることが多く、そうなったら再手術の可能性もある、という話でした。

そのときの段階で葛西手術をしなければ、娘の命は助からなかったかもしれません。まずは手術によって命の危険を回避できた、という感じでした。生後2カ月ごろまでの対応になるという手術に間に合って本当によかった、妻があの日に病院に行ってくれて本当によかったと思いました」(健吾さん)

手術後、伊風紀ちゃんは入院し、投薬治療をしながらビリルビンの数値や腹水がたまらないかどうか、様子をみて過ごしました。約2カ月がたち、少し容態が安定した6月8日、伊風紀ちゃんはようやく退院することになりました。

「退院して自宅で薬を投与しながら、定期的に通院してビリルビンの数値の様子を見ましょう、ということになりました。
ミルクは『エレンタールP』という消化に負担がないミルクに切り替え、自宅ではスポイトで飲ませるような飲み薬の投薬をすることに。三女が生後4カ月を迎える少し前に退院。やっと一緒に過ごせることが、本当にうれしかったです。

双子が生後1カ月になったら写真館で家族写真を撮ろう、と話していたのが、急な入院からの緊急手術でそのままになっていたので、家族5人でやっと写真を撮ることができました。すごくいい思い出になりました」(未紗紀さん)

【畑先生から】便の色は判断が難しいこともある

胆道閉鎖症はどんな子にでも起こり得る疾患で、出生後に便色の異常などで診断に至る疾患です。便色は、母子健康手帳の便色カラースケールが参考となりますが、小児科医でも便色が異常かどうかの判断が難しい場合もあります。伊風紀ちゃんの場合は、双子で2人の便色を比べることができましたが、比べる相手がいない場合はなかなか気づけないこともあります。
おかしいと思ったときは、便の写真を残しておく、受診時にうんちがついたおむつを持参する等が役立つことがあります。

監修/畑彩葉先生 お話・写真提供/三浦健吾さん、未紗紀さん 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部

取材中何度も「あのとき私がもっとよく聞けば・・・」と何度も後悔を口にした未紗紀さん。「双子の2人を比べることができたから三女の異変に気づいたのかもしれません」とも話していました。

インタビューの2回目は、伊風紀ちゃんが再度入院となり、生体肝移植手術をすることになったことを聞きます。

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2024年1月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

まるみキッチン/三浦健吾さん(みうらけんご)

PROFILE
「だれでも簡単に作れる」をモットーにした料理をSNSに投稿する料理家。SNS総フォロワー数290万人越え(24年1月現在)身近な食材で手間を省いた、アイデアに富む実用的なレシピは若い世代からファミリー層まで支持されている。著書に「やる気1%ごはん テキトーでも美味しくつくれる悶絶レシピ500」「弁当にも使える やる気1%ごはん作りおき ソッコー常備菜500」など。

畑彩葉先生

PROFILE
大阪母子医療センター 消化器・内分泌科。 2014年近畿大学卒業、大阪大学医学部付属病院での初期研修、ベルランド総合病院での勤務を経て現職。日本小児科学会認定小児科専門医。

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