弘大発 前立腺がん検査が保険適用に

がんマーカー検査機器を操作する弘大の検査技師
前立腺がん検査の保険適用について説明する大山特任教授(左)と大橋部長

 弘前大学と富士フイルム和光純薬(本社東京)は20日、共同開発したがん検査が、国産の前立腺がんマーカー検査として初めて保険適用になったと発表した。適用は2月1日付。精度の高い検査法として日本泌尿器科学会が診療ガイドラインに記載するなど注目度が高く、関係者らは「弘大発の検査が国内標準になるのでは」と期待。前立腺がん患者の割合が高い欧米への進出も検討している。

 前立腺がん検査はこれまで、血中タンパク質「PSA」の量が基準値以上の受診者を「がん疑い」とし、前立腺に針を刺して細胞を取り出す精密検査「針生検」を行っていた。しかし数値が低めの受診者が陽性になる確率は3割未満で、残る7割は結果的に不要な針生検を受け、痛みや感染症リスクを負っていた。

 弘大大学院・先進移植再生医学講座の大山力特任教授らは、細胞のがん化によるPSAの変化を検出する方法を開発。針生検が必要な人を約4割減らせることが分かった。海外の最新検査法と同レベルの精度な上、血液採取から検査器で調べるまでに24時間たっても精度が低下しないなど、結果の正確性や使い勝手の良さで優位という。

 保険適用により、1回約4千円の新検査を1200~400円で受けられる。泌尿器科学会は、昨年10月発行の前立腺がん診療ガイドラインで、新検査の保険適用に期待を示していた。弘大では、適用前にもかかわらず7カ月間で約200件の検査依頼を全国の医療機関から受けたという。

 弘大と富士フイルムは20日、弘大学内で会見。大山氏は「痛みや感染症リスクがある針生検を避けたかった。保険適用で検査を安く受けられ、(針生検減少で)医療費全体の削減にもなる」と説明。富士フイルム和光純薬・臨床検査薬開発部の大橋利成部長は「19日から大手企業による検査事業も始まった。全国で受診が増えるのでは」と話した。

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