交通指導員「ポン太」堀田さん 「2世」に引き継ぎ引退へ 富山・新庄、安全守り30年

ポン太として交通安全を呼び掛ける堀田さん=富山市新庄町1丁目

  ●「活動に生きがい、満足」

 30年間にわたり、タヌキの交通指導員「ポン太」として交通安全を呼び掛けてきた県交通安全協会富山中央支部新庄地域支部長の堀田松一さん(74)=富山市新庄町1丁目=が高齢を理由に年内限りで引退する。活動を引き継ぐ「2世」の誕生が見込まれることから、着ぐるみを脱ぐ決心をした。「子どもたちに話をするのが生きがいだった。満足している」。変身の日々を振り返ると、柔和な笑みがこぼれた。

 「みんな元気だったかい? 交通ルールを守っているから、事故に遭わなかったんだね」。富山市新庄地域を中心に現れるポン太。幼稚園や保育園で優しく語りかけ、子どもたちの笑顔を引き出してきた。

 ポン太に化けて30年。一度も「中の人」を誰かに譲ったことはない。母の日、父の日、クリスマス。季節のイベントのたび、園児と交通ルールを守る約束をしてきた。時に通学路に立って児童を見守り、ショッピングセンターで親子と触れ合う。「交通安全に対する信念。熱い思いだちゃ」と誇らしげだ。

 ポン太が生まれたのは1994年。県内で交通死亡事故が多発し、100人以上が亡くなった年だった。当時、交通安全協会新庄地域支部の事務局長だった堀田さんが「明るい話題を届けたい」とポン太を始めた。

 幼稚園や保育園で交通安全教室を開き、2008年には91カ所を回った。年齢を重ね、昨年は15カ所。「熱意はなーん衰えん」が、着ぐるみ姿で活動することの体力的負担は増した。

 一時はポン太の「旅立ち」も考えたが、熱意が伝わり、後継者として活動することに前向きな人の声が届いているという。新しい着ぐるみも準備する計画で、「続けてやってほしい。子どもたちが待っとるもんに」と願いを込める。

 自宅にはこれまで園児からもらった手紙や首飾りがたくさん飾ってある。「子どもたちの喜ぶ気持ちが伝わってきて、元気の源になっとる。バトンタッチしても、命ある限りはポン太をやっていきたい」と意欲が満ちあふれた。

 22日は常盤台保育園(同市経堂)でポン太の「誕生会」が開かれる。「心に強く訴えることは忘れん」と無事故のまちを思い描き、愛らしく化けるつもりだ。

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