【原発汚染水漏れ】重層的対策が不可欠(2月21日)

 東京電力福島第1原発の高温焼却炉建屋の外壁にある排気口から放射性物質を含む水が漏えいした問題は、ずさんな安全管理態勢を重ねて浮き彫りにした。東電は協力会社の作業員による人為ミスと結論付けたが、再発を防げない要因をしっかりと検証する必要がある。

 水漏れは7日午前に発生した。建屋内の浄化装置を洗浄する際、弁を開けたまま作業したため、排気口に通じる配管に汚染水が流れ出た。外に漏れたのは1.5トンで、染み込んだ約30立方メートルの土壌を回収した。作業員は「弁が閉まっている」と思い込み、開放状態を知らせる「注意札」の確認も怠ったという。手順書の表現にも一部不備が認められた。

 汚染水を建屋の外に漏えいさせた事実は重い。雨水と一緒に排水路などに流れ込めば、海洋にまで達する可能性は否定できない。作業ミスがあった場合でも建屋内に抑え込める重層的な対策が欠かせない。東電は再発防止策として配管の出口を屋内に設置する改善案を示した。同じような構造の建屋でも実施するよう求めたい。

 廃炉作業を巡っては、作業員が高濃度の汚染廃液を浴びる事故が昨年10月に起きている。全面マスクを外す際に放射性物質の付いた手が顔に触れて内部被ばくするトラブルも12月にあったばかりだ。東電は協力企業に対し、基本動作の徹底を呼びかけているとしているが、作業ミスは続く。安全を最優先する意識は現場にどこまで浸透しているのか、疑念を拭えない。

 小早川智明社長は15日、福島第1原発を訪れ、「疑問に思ったら声を上げて確認し、いったん立ち止まる」との作業中の心得の徹底を関係者に求めた。原子力規制委員会の会合では「精神論だけで(改善は)難しい」として、人工知能を駆使した監視システムの導入などを専門家が提案した。どのようにしたら作業員の危機意識が高まり、ミスも防げるのかを幅広い視点で議論してほしい。

 処理水の海洋放出開始から24日で半年が経過する。30年とされる長期の放水作業の過程で、信頼を損なう問題が起きれば廃炉作業の支障にもなりかねない。県は監視を強め、改善点を具体的に指摘すべきだろう。(角田守良)

© 株式会社福島民報社