アングル:米オプション市場、景気ハードランディングに備える取引増加

Gertrude Chavez-Dreyfuss

[ニューヨーク 20日 ロイター] - 米債券市場では米経済が堅調に推移するとの見方が強まっているが、オプション市場では急激な景気の落ち込みに備えた「スワップション」が増えている。

アナリストによると、金利が低下した際に利益が出る「レシーバーズ・スワップション」という取引に、ヘッジファンドからの需要が高まっている。レシーバーズ・スワップションの買い手は一般に、固定金利を受け取って変動金利を払う金利スワップの権利を得る。

レシーバーズ・スワップションは通常、景気見通しへの懸念を反映する。反対に「ペイヤーズ・スワップション」は固定金利を払って変動金利を受け取る権利を得るもので、金利上昇時に利益が出る。

BoFAセキュリティーズの金利ストラテジスト、ブルーノ・ブレイジンハ氏は「マクロ経済の観点から見ると、ハードランディング(マイナス成長)とノーランディング(景気拡大持続)の確率はほぼ均衡している」が、「オプション市場はハードランディングの確率の方をより大きく織り込みつつある」と語る。

アナリストによると、レシーバーズ・スワップションは特に、連邦準備理事会(FRB)の金融政策を反映する1年物など短期の取引が多い。

ブレイジンハ氏によると、ヘッジファンドとは対照的に、資産運用会社は景気が堅調さを保ち、高金利が長期化する可能性に備え、ペイヤーズ・スワップションを買っている。

アナリストによると、全体として見れば依然としてソフトランディング派が過半数を占めているが、ハードランディング派も勢いを増している状況だ。

ソフトランディングもしくはノーランディングが支配的な見方となったのは、FRBの積極的な利上げにもかかわらず米経済の堅調さを示す指標が相次いで発表されたためだ。

ソーンバーグ・インベストメント・マネジメントの共同投資責任者、ジェフ・クリンゲルホファー氏は、FRBの超金融引き締めを経てきたことを考えれば、米経済がハードランディングすると予想するのは妥当だと指摘。

「単純な教科書的経済学だ。金利が上がれば将来の需要のハードルは上がる。だが現時点で景気後退が現実化していないため、多くの投資家は『リセッションは起こらないな』という考えに急速に傾いている。私に言わせれば、これは間違いだ」とクリンゲルホファー氏は語った。

同氏は、一部の経済指標には強さも見られるが、大半の指標は景気減速が進行中であることを示しているとも述べた。

<ボラティリティー>

米国のインプライドボラティリティーは、年初の高水準からはやや落ち着いたものの、昨年11月に比べるとなお高い。ヘッジもしくは投機目的のオプション需要が増えると、ボラティリティーは高まる傾向にあり、ボラティリティーが高いほど、市場は相場の不安定化を見込んでいることになる。

米国のボラティリティーは、既に景気が減速しているユーロ圏に比べても高くなっている。

バークレイズのマネジングディレクター(債券ストラテジー担当)、アムラット・ナシカール氏は、米国のボラティリティーが比較的高いことについて、ユーロ圏は欧州中央銀行(ECB)の利上げによって景気が減速した一方、米国はそうした関連性が見えづらいだけに、「大きなショックを恐れている」と分析した。

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