社説:草津市長5選 市民参加で地域強化を

 草津市長選は現職の橋川渉氏が前回に続く無投票で5選を決めた。1954年の市制施行以来、連続無投票は初めてである。

 前々回の2016年以降、有権者は市長を選ぶ権利を行使できず、長期に及ぶ市政への関心の低下が懸念される。草津の政治、政党関係者には「無風での多選」の意味を改めて問い直してほしい。

 橋川氏にはこれまで以上に市民の声を丁寧にくみ取り、市政への参加を広げるよう手を尽くしてもらいたい。

 橋川氏は4期16年で、小、中学校の授業ICT(情報通信技術)化や教室へのエアコン導入をいち早く進めたほか、市民の健康推進施策に力を入れ、自治体別の平均寿命で全国トップ10に入った。

 今選挙では保守系や公明党、国民民主党など大半の市議から支持を得たほか、連合滋賀なども推した。市職員出身らしい手堅い行政手腕は、おおむね評価されたということだろう。

 湖南地域の中心都市である草津市の人口は、20年の国勢調査で14万人を超えた。滋賀県人口の1割を占める。住宅の開発とともに、JR草津駅前や草津川跡地を改修した公園などの市街地整備も進んでいる。

 ただ、人口の増加が続く一方で、人のつながりが希薄になっている面は否めない。新型コロナウイルス禍の影響もあり、浮上した未就園児と親の孤立問題や不登校生急増への対応などに踏み込み、地域社会を編み直したい。

 開発から半世紀がたつ郊外の住宅地では、子が独立した高齢世帯が目立ち、空き家も増えている。新たな住民の流入を促す工夫が欠かせない。

 市内に企業進出の引き合いがあるものの、立地できる余地が少ないのは産業政策の大きな課題だ。

 一方、市南部の丘陵地では立命館大びわこ・くさつキャンパスが開学から30年となるが、経営学部に続き、この春には情報理工学部・研究科が大阪府に移転する。

 市は長らく京阪神への通勤に便利なベッドタウンであることに加え、大学の誘致により急速に発展してきた。だが、日本全体が少子高齢化で縮小する中、長期的には草津にも老いと人口減少が訪れることは避けられまい。市民ニーズも多様化する中、大きな曲がり角を迎えているともいえよう。

 将来にわたり「住み続けたいまち」を掲げ、20年間に向けてスタートする橋川市政に課せられた責任は一段と重い。

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