「おわら風の盆」に有料席 1席2000円、9月に試行

大勢の観光客が訪れるおわら風の盆=昨年9月、富山市内

  ●伝統継承へ富山市が支援

 富山市八尾地域で毎年9月1~3日に行われる「越中八尾おわら風の盆」で、有料の観覧席が試験的に設置される。市によると、設置場所は町流しを間近で見られる沿道で、料金は1席2千円程度を想定している。おわら風の盆は富山の代表的な伝統行事だが、担い手や資金の面で課題を抱えており、市は行事を守り継ぐ仕組みづくりを後押しする。

 市は21日に発表した新年度当初予算案に、行事運営委に対する補助金150万円を計上した。観覧席の設置費用や警備費に充てる。

 おわら風の盆は約300年の歴史があるとされ、そろいの法被や浴衣を着て編みがさを目深にかぶった男女が三味線や胡弓(こきゅう)の音色に合わせて踊る。全国的に知られる観光資源で、今年度は県内外から19万人(主催者発表)が訪れた。

 行事運営委は県民謡越中八尾おわら保存会、市などで構成。町流しが繰り広げられるエリアのうち八尾町東新町と西新町に一定時間、一般客が進入できないスペースを確保して椅子を置き、混雑を避けて情緒ある演舞を鑑賞できるようにする。利用時間は1回20分程度で検討している。

 行事が開催される3日間で有料席を設ける回数や具体的な設置場所、席数、料金などは行事運営委内で協議する。利用希望者は旅行会社を通じて事前に募り、席料は行事運営委の収入とする。雨の場合は曳山展示館でのステージ鑑賞に変更する。

 おわら風の盆の運営費は例年、企業の協賛金や市からの1500万円前後の補助金などで賄っている。ただ、会場設営などに経費がかかり、赤字の年もあるという。2019年度まで八尾小グラウンドに設けられていた有料の「おわら演舞場」が設備の老朽化により中止されたことも収入減につながった。

 少子化などの影響で担い手も減っており、保存会支部によっては地域外からの参加を受け入れている。

 市は有料観覧席により、おわら行事の「稼ぐ力」を高め、観光客の満足度向上や担い手の意欲、やりがいにもつなげたい考え。新年度の試行設置では行事運営に支障がないか、利用者の感想などを確かめる。

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