「マニアが集う長崎プロジェクト」に3600万円計上 アニメ・小説の聖地として集客強化 2024年度県予算案

月9ドラマにも登場したグラバー園に続く坂。多くの観光客でにぎわっている=長崎市南山手町

 好きなことのために遠くまで足を運んだり、関連グッズを集めたり。そんなマニア(愛好家)の呼び込みに、長崎県が乗り出した。2024年度は本県ゆかりのアニメや小説、県産酒などを入り口に国内外から集客し、ロケ誘致にも力を入れる。
 本県は昨年のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」に続き、放映中の月9ドラマ「君が心をくれたから」(KTN)でも舞台となった。グラバー園やハウステンボス、長崎水辺の森公園などのスポットが登場。折しも「長崎ランタンフェスティバル」が取り上げられ、ロケ地を巡る観光客も多いようだ。
 こうしたドラマやアニメのモデルになった場所、ロケ地に訪れるのが「聖地巡礼」だ。アニメツーリズム協会の24年版「訪れてみたい日本のアニメ聖地88」には、5作品で県内4市が選ばれた。
 県観光連盟はロケを誘致する上での「強み」について、異国情緒あふれる景観や土地ごとの歴史、文化、食などの「個性」とみている。それが豊富だからこそ制作会社のさまざまな要望に応えられるという。
 アニメ聖地化の好例は映画「君の名は。」(16年)。県観光連盟によると、モデルとなった岐阜県飛騨市は、映画に登場した図書館内を条件付きで撮影できるようにするなど積極的にファンを誘致。市の試算では16年に3万6千人が聖地巡礼に訪れた。
 アニメなどの舞台探訪の情報サイト「推し巡り」を運営する、推し巡り協会理事長の平野隆成さん(30)=長崎市=は、作品を切り口に長崎の魅力を知ってもらうことに加え、「作品を知らない地元の人も巻き込み、新しいファンを生み出す取り組みも必要」と話す。
 平野さんが一例に挙げたのは、舞台になった場所へのポスター掲示。聖地を回るフォトラリーイベントなど、アニメと違うコンテンツを絡めると参加層が広がり、新たな関係人口が生まれるという。ただ、アニメは新作が次々に制作され、時間がたてば「“推し”が変わってしまう」という課題もある。
 県は24年度当初予算案に「マニアが集う長崎プロジェクト」として3600万円を計上した。本県ゆかりの小説の書店フェアやアニメの企画展を実施。作家や漫画家を取材旅行に招く県事業「描いてみんね!長崎」で、開始した16年度以降に生まれた23作品の活用などを想定している。県はマニア向けの素材を掘り起こし、ロケ誘致を継続。マニアの周囲にいる「潜在層」にも情報発信する。
 県内飲食店への県産酒導入も促進。鉄道や釣りなど、さまざまなジャンルの聖地・拠点化を目指す。

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