「キャリアの終焉を免れたのは幸運だった」躍動した三笘薫への“殺人タックル”をブライトン番記者が批判。敵サポーターからのブーイングには苦言「信じられない」【現地発】

2月18日にアウェーのブラモール・レーンで行われたシェフィールド・ユナイテッド戦。ブライトンが5-0で大勝したこの試合で、三笘薫は幸運にもキャリアが終焉するのを免れることができた。

11分のメイソン・ホルゲイトのファウルはそれほど悪質だった。ホルゲイトの右足は日本代表の左ひざ上のあたりを捉え、これに対して、レフェリーはイエローカードを提示した。しかしビデオ判定が終了すると、瞬く間にレッドカードへと変わったのだった。

危険極まりないこのタックルについて、スカイスポーツで解説を務めた元イングランド代表のジェイミー・レッドナップは「あれは暴力行為だ。私が見た中でも、過去数年で最も悪いタックルだった。ミトマがどうやって脚を後ろへ引くことができたのか、分からない。しかしそれができて本当に良かった。できていなければ、彼のキャリアは確実にエンドを迎えていたはず」と説明した。

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本当に幸運なことに、三笘は大けがを負うことはなかった。そしてブライトンはこの数的優位を利用し、ファクンド・ブオナノッテ、ダニー・ウェルベック、相手DFジャック・ロビンソンのオウンゴール、さらにサイモン・アディングラの2ゴールによって圧勝を手にすることができた。2024年に入ってリーグ戦ではまだ2勝目、それだけに非常に重要な勝利を掴んだのである。

開始直後から、ブライトンの攻勢が続く試合だった。左サイドの三笘に、右サイドのアディングラ。特に後者は、コートジボワール代表の一員としてアフリカ・ネーションズカップで優勝を果たしており、勢いに乗っている。

彼らのいなかった6週間。両翼にはスピードとテクニックが圧倒的に欠落していた。しかし飛車角のような存在が戻ってきた。チームに欠かせない2人が復帰したブライトンを、最下位に低迷し、一人選手が少なくなったシェフィールド・Uが止められるはずがなかった。

開始直後の3分には、三笘が右ウィングバックのジェイデン・ボーグルを軽々とかわしてクロスを中央へ入れたが、ディフェンダーにブロックされてコーナーキックとなった。さらに直後の逆サイドでは、今度はアディングラがヤッセル・ラルーシを悩ませていた。
さらに、後半に入っても三笘の影響力は消えることはなかった。61分にはボックス内でボーグルを再び抜き去って、ゴール至近距離からシュート。角度がなかったためにゴールキーパーに阻まれたが、切れ味の鋭さを見せた。

その後もあきらめずに攻め続けた結果が、75分のオウンゴールだった。左サイドでペナルティエリアすぐ外から、三笘が出した球足の速いクロスでジャック・ロビンソンのオウンゴールを誘発したのである。そして、直後に三笘はお役御免となっている。

数字だけを見れば、三笘は9月24日以来ゴールを決めていない。カップ戦を含めた出場した全試合で3ゴール・6アシストは、昨季の18ゴールポイントと比較すると、物足りないものである。

しかしこの試合でリーグが選出するプレーヤー・オブ・ザ・マッチに輝いたように、得点以外のすべての面で好パフォーマンスを披露していたのは確かだ。そのゴールでさえも、すぐそこまで来ているはずだ。あのプレーを見れば、それは火を見るよりも明らかだ。

取材・文●リッチー・ミルズ(ブライトン番記者)
翻訳●松澤浩三

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三笘、アディングラ、そしてアンス・ファティといったスピード豊かなワイドプレーヤーを欠いている間、シーガルズ(ブライトンの愛称)は、明らかに攻撃の幅が減少していた。狭い範囲、特にセンター中心の攻撃が増え、相手が守備をしやすい状況に陥っていた。

しかし今後は、この問題が解消されていくはずだ(ウィンガーにけが人が出なければ、という条件付きではあるが)。そんな状況下で、この試合でのブライトンの戦術は、両ウイングの2人にボールを集めることにあった。特に左サイドの三笘に集まる傾向が強かった。

最終ラインからのロングフィードや、左サイドバックに入ったタリク・ランプティとの連携、さらに中盤のビリー・ギルモアや司令塔のパスカル・グロスなど、様々なラインから三笘の足もとにボールが集まった。ちなみに、ホルゲイトが殺人タックルで一発退場して以降、ホームサポーターは三笘にボールが入るたびにブーイングを続けていた。信じられない。驚くべきことである。

そんな22番は、23分にボックス内でドリブルしているところを後ろから相手ディフェンダーに背中を押される。PKとなってもなんら不思議ではない場面だったが、PKどころかビデオ判定にもならなかった。

しかしその1分後。パスカル・グロスが右サイドから送ったクロスに反応した三笘がエリア内に走りこんでスライディングをしながらシュート。ゴールキーパーのウェス・フォデリンガムが弾いたが、そのボールをウェルベックがしっかり詰めて2点目につながった。

このゴールにより、26歳の日本代表アタッカーはさらに自信を深めていく。結果、試合を通じてシェフィールド・Uのバックラインは三笘のドリブルに翻弄され続けるのである。ランプティが左サイドでスペースを消してしまう場面が目立ったが、それでも三笘は内側に入ったり、前線に飛び出してしてスペースを見つけ出し、相手の脅威となり続けた。だからだろう。ランプティは前半のみで交代を言い渡されている。

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