東京五輪で正式種目になり、今年のパリ五輪でも日本勢の活躍が期待されるスケートボード。魅力を広く知ってもらおうと、兵庫県尼崎市で活動するNPO法人「ASK(アスク)」が常設スケートパークの整備に向け、クラウドファンディング(CF)に取り組んでいる。体験会やマナー向上の講習会を開くメンバーは「地域と一緒に誰でも安心してスケボーができる場所をつくり、尼崎からオリンピック選手を」と意気込む。(広畑千春)
2020年3月、高校2年だった同法人の吉金潤一郎代表理事(21)は、市に短いメールを送った。
「尼崎市にはスケートボードをする場所が少ないので、つくってほしいです」
スケボーといえば「やんちゃ」「うるさい」とみなされがちで、公園や河川敷で練習しただけで住民に怒られた。使用を禁じられ「ろくな大人にならない」と言われた仲間もいた。
練習したいだけなのに…。期待はしていなかったが、市のまちづくり提案箱に書き込んだ。
すると、市から「パークづくりから参画しませんか」と返ってきた。
吉金さんら中高生5人は、21年3月に任意団体を結成し、8月に市の若者による政策提言制度でパーク整備の必要性を訴えた。
競技に使う障害物「セクション」を子どもたちと手作りするワークショップや体験会を展開すると、練習場所がなくてやめてしまった人や「子どもにさせてあげたいけれど…」と悩む保護者らに出会った。 ### ■未来に残す場所
単に「思い切りスケボーができる場所」ではなく、「未来のスケーターに残す場所」をつくりたい-。22年7月には、NPO法人格を取得した。CFで資金を募り、同10~11月に市内で簡易パークを開設する社会実験にこぎ着けた。
プラスチック製の板を200平方メートルにわたって敷き詰め、上にセクションを置いた。午前9時から午後9時に無料開放したところ、約1カ月で延べ700人余りが利用した。期間中に周辺を訪れた人へのアンケートでは、98.5%が市内にスケートパークができることに「賛成」と答えた。
小中学生スケーターらによる危険な滑走や設備損壊の問題も、期間中は解消された。「道などで滑られるよりパークがあった方がいい」「危険だと思っていたけど管理してくれるなら安心」といった声が寄せられたという。 ### ■地域巻き込んで
23年4月には松本真市長に結果を報告し、常設パーク整備へ具体的な検討を始めた。目指すのは、同県西宮市にある西宮浜総合公園のパークに並ぶ約500平方メートルの滑走面積を持つ施設だ。
利用者が考えながら使えるようセクションは移動式とする。営業は午前9時~午後9時で、高校生以上1日500円(土日曜と祝日は100円増し)、中学生以下は無料とし、管理はスケーター自身が担う。
今回のCFは今年4月8日まで、建設工事費など1075万円を募る。集まれば6~9月に市内の公園内で工事し、11月にオープンさせるという。
市にメールを送ってから間もなく丸4年。ASKのメンバーは13人になり、応援してくれる地域の人や企業、団体も少しずつ増えている。吉金さんは「いろんな立場の人が本音で話し合える機会ができれば、距離は近づけていける。常設パークをそういう場の一つにしたい」と話している。