「モアイを返せ」大英博物館のSNSが、コメントで大荒れ→大統領まで反応し…

大英博物館のInstagramに並ぶ、「モアイ像を返せ」のコメント。一体なにが起きているのか。

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南米のチリ領イースター島には、先住民族が作ったモアイ像が約900体存在している。

約150年前、このうち2体がイギリス人により無許可で持ち出され、現在、大英博物館に展示されている。

イースター島のモアイ像の多くは、凝灰岩を彫ってつくられているが、中には玄武岩でつくられた珍しいモアイ像もある。

大英博物館に展示されている2体のうち1体は、この玄武岩でつくられたモアイ像だ。

イースター島の代表団は2018年、同博物館を訪問し、モアイ像をイースター島に返還 することを求めた。

今年に入り、チリ在住のインフルエンサーが、モアイ像の返還を求めるメッセージを、同博物館のSNSに書き込むよう、フォロワーに呼びかけている。Guardian紙など、複数メディアが報じた。

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インフルエンサーは、「大英博物館にモアイ像を返還させよう」というテロップをつけた動画を、TikTokやInstagramに投稿。「博物館がSNSのコメントを制限するように仕向けよう」と発信している。

同博物館 のInstagram投稿には、投稿の中身にかかわらず、「モアイ像を返して🗿🇨🇱」といったコメントが、多いときには500件以上寄せられている。

同博物館は、投稿のコメント欄を一部閉鎖するなどして対応していると、Guardian紙 は報じた。

こうしたSNS上の動きに、チリのガブリエル・ボリッチ大統領も反応している。

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エル・パイス紙 によると、ボリッチ大統領はラジオ番組『チロエ』に出演し、モアイ像の返還について次のように話した。

「我々がチリを世界に向けて紹介するのであれば、パイネ山群はもちろん、モアイ像は欠かせない存在となるでしょう。イギリス人たちは、モアイ像を我々のもとに返してほしい」

一方、イースター島側は、ネット荒らしを伴うモアイ像返還の要求や、大統領のコメントに対し、危機感をつのらせている。

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イースター島知事は、SNSユーザーのネット荒らしを、「モアイ像を取り巻く状況を悪用している」と表現し、大統領の対応についても次のように語った。

「ボリッチ大統領は、我々イースター島の人々の、宗教や文化など、あらゆる面で重要なモアイ像を、政治的に利用すべきではない」

今回の知事のコメントは、チリ政府が先住民の文化財であるモアイ像について、過度に反応することをけん制する目的があると考えられる。

ヨーロッパ諸国では近年、旧植民地などから持ち去った文化財を現地に戻す動きが広まっている。

フランス政府は2021年、植民地時代の西アフリカ・ベナンから持ち出した美術品26点を返還 した。

大英博物館では、古代エジプト文字の解読のきっかけとなった「ロゼッタストーン」や、古代ギリシア彫刻群「エルギン・マーブルズ」などに対し、返還要求運動が起こっている。今のところ返還は実現していない。

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