「選択的夫婦別姓」求め原告に いま、2人は婚姻関係ない“事実婚”で生活「子の代まで問題残したくない」

「夫婦別姓」についてです。婚姻関係にある夫婦が別々の姓を名乗る夫婦別姓「認めてない民法の規定は憲法に違反する」として、これまでに2度、裁判が起こされましたが、最高裁はいずれも合憲と判断。今も認められていません。こうした中、別々の姓を名乗るため、事実婚で生活する男女12人が、3月、新たに集団提訴することが分かりました。原告として参加する長野県内の夫婦は、「子どもたちの世代まで同じ問題を残したくない」としています。

原告団に参加・内山由香里さん:
「子どもたちの世代まで同じ問題を残したくない。何か自分でもできることがあればしたいなと(訴訟に)参加することにしました」

上伊那郡に住む内山由香里さん(56)と小池幸夫さん(66)夫婦。夫婦で別の姓を使うことを選び、婚姻関係がない「事実婚」で生活しています。

同じ高校で教員をしていて1991年に結婚した2人。由香里さんは、結婚後も、職場で「内山」姓を名乗っていましたがー。

内山由香里さん:
「公的に証明するもの、免許証、パスポート、健康保険証、すべて戸籍姓なので、通常使用といっても肝心なところで使えない。自分の名前が使えないことで納得がいかない、嫌な思いをしてきた」

私生活などで「小池」姓で呼ばれることに違和感を感じるようになり、長男が生まれた翌年、2人は離婚して「事実婚」に。長女、次女が生まれるタイミングでも、親子関係を明らかにするため籍を入れ、その後、離婚しました。

小池幸夫さん:
「(一つの姓になるのは)今まで当たり前だと思っていたが、それは男にとって当たり前だけど、女性にとってはこんなに大変なことがあるんだと理解して…」

内山由香里さん:
「名字が違うということを普段意識することは全くないし、名字が違うことで一体感が失われることも一切なかった」

夫婦別姓を認めない民法の規定については、最高裁が2度、「合憲」と判断しています。その上で、「制度のあり方は国会で議論され、判断されるべきだ」ともしています。

夫婦別姓を巡っては、経団連が結婚しても姓を一つにするか、別々の姓にするか選べる「選択的夫婦別姓制度」の導入を政府に求めています。

また、全国およそ300の地方議会で導入を求める意見書が採択されるなど、夫婦別姓を容認する声が広がっています。

一方で、「家族の一体感が壊れる」などの根強い意見から、国会での議論は進んでいません。

由香里さんは、2020年に結婚した長女とのあるやり取りを明かしました。

内山由香里さん:
「(結婚した長女が)戸籍姓に変更の手続きをしている中で、泣きながら電話してきて『自分の名前を葬っている、お葬式を出している感じがして切なくて泣けてくる』と。私が30年以上前に感じたことを娘にも同じ思いをさせていることが情けなくて…」

長女の話などをきっかけに原告団に参加することを決めた2人。願うのは、選択的夫婦別姓制度の導入です。

原告団に参加・小池幸夫さん:
「社会の情勢とか変わってきていると思う。今回は本当に違憲判決を出してほしいし、あるいはその動きの中で判決に至る前に国会がしっかりと考えて動いてほしい」

原告団に参加・内山由香里さん:
「たぶん選択的夫婦別姓を導入することで不幸になる人はいないと思う。若い子たちも安心して次の一歩を踏み出せるということだと思うので、そこを今度の裁判ではいい加減認めてほしい、法制化に向けて後押しをしてほしい」

原告団は、3月8日、東京地裁と札幌地裁に提訴する予定です。

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