テニス界屈指のビッグサーバー、元世界14位カルロビッチが引退。24年間に及んだ現役生活に終止符を打つ<SMASH>

稀代のビッグサーバーであるイボ・カルロビッチ(クロアチア)が引退を発表した。2021年の「BNPパリバ・オープン」(アメリカ・インディアンウェルズ)を最後に公式戦でプレーしていなかった44歳は、21日にX(旧ツイッター)を更新し、正式に現役引退を表明。20年以上にわたって活躍し、自己最高14位まで上り詰めた輝かしいキャリアに幕を下ろした。

「皆さんの中には、僕がしばらくトーナメントに出場していないことに気付いている方もいると思いますが、今でも毎日のようにいつツアーに復帰するのかと聞かれます。残念ですが、この投稿で正式に引退を表明したいと思います」

“ドクター・イボ”、日本では“大先生”の愛称で親しまれたカルロビッチといえば、身長211センチ(トップ15で史上最高身長)の大きな身体から繰り出すサービスが最大の武器だった。樹立したサービス関連の記録も枚挙にいとまがない。

例えば、1試合でのサービスエース数では、歴代最多こそウインブルドン(イギリス・ロンドン)で史上最長試合を戦ったジョン・イズナー(アメリカ)とニコラ・マユ(フランス)に譲っているが、デビスカップ(78本)、全豪(75本)、全米(61本)、全仏(55本)、ATPツアー(45本)の記録はいずれもカルロビッチが作った。
またATPのサービススタッツでは、ファーストサーブポイント獲得率(82.7%)、サービスゲーム勝率(92.0%)、1試合平均エース数(19.8本)の3部門で歴代最高をマーク。同胞のゴラン・イバニセビッチや、ミロシュ・ラオニッチ(カナダ)、イズナーなど名だたるビッグサーバーを抑えてトップに立っている。

獲得した8つのツアータイトルにはクレーの大会も含まれるが、やはり活躍が印象深いのはグラス(芝)コートだろう。四大大会本戦デビュー戦だった2003年のウインブルドンでは、1回戦で当時世界2位のレイトン・ヒューイット(オーストラリア)を撃破。大会史上初めて、前年覇者が初戦で敗退するという衝撃的な試合だった。また、四大大会で自己最高の準々決勝進出を果たしたのも、09年のウインブルドンだ。

絶大なサービス力は彼の息の長い奮闘を助けたはずだ。ツアーでの最後の決勝進出は39歳、最後の勝利は41歳で、前者はケン・ローズウォール(オーストラリア)に、後者はジミー・コナーズ(アメリカ)に次ぐ歴代2位の年長記録である。

大先生の投稿はこう締めくくられている。

「長年にわたってファンやサポーターでいてくれた皆さん、僕の旅の一部となってくれてありがとう。皆さんを愛しているし、また会えることを楽しみにしています。

僕はこれからもテニスに寄り添い、自分の知識やツアーでの素晴らしい経験を新しい世代の選手たちと分かち合っていくつもりです。焦点を変え、旅を続けていきます」

構成●スマッシュ編集部

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