戦禍、震災に負けず夢を 輪島のウクライナ避難民

金沢学院大の合格を喜ぶヴァレリアさん=山梨県甲斐市の日本航空高

  ●グラフィックデザイナー目指し金沢学院大進学

 ロシアによるウクライナ侵攻から24日で2年を迎えた。攻撃を逃れるため輪島市の航空高石川に編入したウクライナ避難民のヴァレリア・ロトリエヴァさん(18)は能登半島地震で被災し、現在は山梨県甲斐市の日本航空高に通う。戦禍と震災に遭いながらも、グラフィックデザイナーを目指し、勉学に励んでいる。「石川はふるさとのような場所」というヴァレリアさんの元に22日、金沢学院大芸術学部の合格通知が届き、夢への一歩を踏み出した。

 ヴァレリアさんは、ウクライナ第2の都市ハルキウ(ハリコフ)の出身。2022年6月に来日し、航空高石川で、書道部に入るなど日本文化に触れながら勉強している。

 1月1日は輪島市内の集合住宅で同居する母親と強い揺れを感じた。「とてつもない地震で怖さや戸惑い、知人の心配などいろんな感情があった」と振り返る。

 ウクライナでは自宅から「パーン」という爆発音が聞こえ、おびえる日々を過ごした。戦禍から逃れるために来た輪島では揺れが襲い「どうしてこんなつらい思いをしなければいけないの」と悲痛な表情を浮かべる。

 それでも、祖国に残る父から地震を心配する連絡があった時には「大丈夫」と気丈に振る舞った。「心配をかけたくなくて、うそをついた」と打ち明けた。

 金沢学院大は昨年12月に芸術学部の授業を見学して受験することを決めた。「社会に新しいものを生み出す可能性や希望を感じ、夢を実現できると確信した」と話す。金沢を訪れる際には兼六園や金沢21世紀美術館を巡るのが楽しみだったといい、奥深い文化に近くで触れられることも決め手になった。

  ●大学が生活支援

 小論文や面接によるエントリー選抜入試で合格を勝ち取り、母は拍手して喜んでくれた。航空高石川の青木洋介校長は「日本語がほとんど分からない状態から1年半ですごい上達した。本当によかった」と目を細めた。金沢学院大は入学金や授業料を免除し、生活を支援するとしている。

 「将来はウクライナの人にも見てもらえるような広告ポスターやグッズのパッケージを作りたい」と力を込めるヴァレリアさん。目下の楽しみは、3月に日本航空高で行われる航空高石川の卒業式に出ることだ。

 ウクライナで通っていた美術学校や第二のふるさと・輪島での門出はかなわなかったが、高校生活の節目を迎えることを心待ちにする。「いろんな経験をしたけど、たくさんの人のおかげでここまで来られた。感謝の思いをもって友達と一緒に卒業したい」と話した。

  ●県内に10世帯17人

 石川県によると、ウクライナからは現在、10代未満~70代の計10世帯17人が県内に避難している。

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