被災の盤駒、対局彩る 珠洲・塩井さん「復興の契機となれば」 棋王戦第2局

両対局者に駒について説明する塩井さん(中央)=北國新聞会館

 棋王戦5番勝負第2局(北國新聞社主催)の会場となる金沢市の北國新聞会館では、棋士が対局室や駒を確認する「検分」が行われた。能登半島地震で自宅が倒壊し、妻の紀美子さん(64)を亡くした珠洲市の団体職員塩井一仁さん(63)が将棋の盤と駒を提供した。塩井さんは「自分の盤と駒が、若い2人の対決を彩り、復興の契機となればうれしい」と語った。

 将棋愛好家の塩井さんは2009年以降、金沢での棋王戦の対局でほぼ毎年、盤と駒を提供してきた。地震で多くの思い出の品が倒壊した家屋の下敷きとなり、がれきをかき分けて盤と駒を見付けた。紀美子さんを亡くし、失意の中にいたが、将棋好きな塩井さんをいつも応援してくれた妻が喜ぶとの思いから提供を決めた。

 塩井さんは、藤井棋王と伊藤七段に高級品のツゲの「盛り上げ駒」2組について説明。2人は盤上に並べて手触りを確かめた。塩井さんの推薦もあり、これまでタイトル戦で使われていない1組が選ばれた。

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