淡路島ノリ廃棄、痛恨のタイミングに落胆 出荷量増える時期、新調した機械「廃棄のために稼働」 海域で油確認から2週間

淡路島西岸の海上に並ぶノリ網=20日、淡路市室津沖(撮影・内田世紀)

 兵庫県淡路島西岸の沖で油の塊が確認されてから25日で2週間。淡路市富島以南と洲本市五色町の沿岸部では養殖ノリの廃棄が決まり、最盛期を襲った大打撃に重苦しい空気が漂う。「損害はどれぐらいになるのか」「信用をなくしたくない」。水産関係者は損害への補償や風評被害に懸念を募らせながら、ノリの処分作業を進めている。

■「安全性が第一」

 「重油のような油の塊が見つかった」。11日午後、島西岸で水産業を営む男性に一報が入った。

 翌12日、男性は確認のため沿岸へ。淡路市内の海岸では、見た目には分からなかったが、油の臭いがした。「砂浜を歩くと、靴の裏に油がべったりと付いた」と振り返る。

 洲本市五色町の海岸で、浜に打ち上がっていた百本ほどの流木に、茶色い油の跡を見つけた。神戸海上保安部に通報し、写真を撮りに来てもらった。

 その後、淡路、洲本両市の6漁業協同組合が参加する「西浦水交会」の会議が何度か開かれ、ノリの廃棄が決まった。

 男性が使う網や浮きに、油の付着は確認できなかった。だが、実際に見た木の油の跡が頭をよぎった。

 「絶対にノリに付いていないかと問われると、自信はない。商品の安全性が第一。信用がなくなるのが一番怖い」と男性。廃棄は仕方がない、とあきらめた。

■「刈るにも費用。損でしかない」

 ノリの加工に使う機械を新調したばかりだったという別の男性は「油が確認されたのは、新品を使い始めてまだ数日というタイミング。今は廃棄のために使っている」と声を落とした。

 一般的にノリの収穫期間は12~3月ごろ。繰り返し摘むにつれ、伸びが良くなることが多く、まさにこれから出荷量が増えるという時期だった。

 対象地域の漁業者は11日以降、油の付着にかかわらず、ノリの伸びた部分を廃棄するため刈り取りを続ける。男性は「30年以上続けてきたが、こんな被害は記憶にない。刈るにも費用がかかる。損でしかない」とため息をついた。

 ノリの焼却処分は21日、淡路市野島常盤の夕陽が丘クリーンセンターで始まった。一般廃棄物として処理するためには、ノリをいったん乾燥させなければならないという。 (中村有沙、荻野俊太郎、三宅晃貴)

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