頼みの長谷川唯も孤立状態。北朝鮮戦は引き分けで御の字のゲームだった【なでしこジャパン/コラム】

2024年2月24日、サウジアラビアでパリ五輪最終予選の第1戦に臨んだなでしこジャパンが北朝鮮を相手にスコアレスドロー。ピンチに見舞われるシーンが多く、正直、引き分けで御の字のゲームだった。

4-3-3システムを採用したなでしこジャパンは、宮澤と遠藤をいずれも負傷で欠く左サイドに植木と古賀を起用。昨年の女子ワールドカップ以後の試合で見たことのないスタメンで戦った影響か、前半はとりわけ攻撃面に不安を残した。

アンカーの熊谷が効果的な縦パスを入れる回数は少なく、左サイドバックに抜擢された18歳の古賀もこの日は展開力に乏しく、長谷川や藤野の個人技頼みという印象だった。最終ラインから流れるようなビルドアップはほとんど見当たらず、ゴールへの匂いを感じられた場面は田中のシュート(41分)しかなかった。

むしろ目を引いたのは北朝鮮のカウンターだ。少ない人数で攻撃を仕掛けながらもエリア内に進入し、高い確率でシュートに持ち込む。南や古賀らの懸命なディフェンスで失点にならなかったが、北朝鮮のアタックには確かな怖さがあった。

後半に入って北朝鮮が攻勢を強める一方、なでしこジャパンは相変わらず攻撃に精彩を欠いた。植木に代わってドリブラーの中嶋が投入されても流れは変わらず、頼みの長谷川が孤立状態と最悪に近い状況に陥りつつあった。谷川の投入で落ち着きを取り戻したような時間帯もあったが、結局のところ、劣勢を跳ね返すほどの勢いは最後まで生まれなかった。

暑さのせいもあるだろうが、やはり遠藤と宮澤不在が痛手だった。とりわけ、4-3-3システムで戦術の肝になっていた遠藤の穴は大きく、実際、後半はチャンスらしいチャンスがなかった。

DF陣、GK山下の奮闘でどうにか無失点に乗り切り、次のホームゲームに繋げたのが最大の収穫だろう。

文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)

© 日本スポーツ企画出版社