大谷グラブでメジャー気分 珠洲でキャッチボール大会

大谷選手のグラブを使って体を動かす児童=珠洲市営野球場

  ●「みんなと一緒楽しい」

 珠洲市で24日、米大リーグ・ドジャースの大谷翔平選手から贈られたグラブを使ったキャッチボール大会が開かれた。能登半島地震で市内の小学校の多くは体育館が避難所、グラウンドは避難住民の駐車場として使われている。思うように体を動かす機会が少なくなった中、目を輝かせて白球を追う子どもたちはメジャー気分に。被災地に響く歓声と笑顔に、こちらも勇気づけられた。(渡邊翔太)

 珠洲市教委によると、各小学校の体育の授業は、教室で体操や縄跳びをしたり、体育館の空きスペースでマット運動をしたりするなど、地震前と比べて制限があり、十分な運動の機会を確保することは難しいという。

 そんな中、20日に大谷選手のグラブが市内の各小学校に届いた。各校でお披露目はされたものの、実際に使う機会はなく、市教委が子どもたちに運動の機会を提供しようと、珠洲学童野球クラブの初練習に合わせて大会を企画し、参加を呼び掛けた。

 市営野球場で開かれた大会には、学童野球クラブの13人と、一般参加の児童9人が参加。ランニングやダッシュで体を温めた後、大谷選手のグラブでキャッチボールしたり、捕球する練習に取り組んだりした。最初はぎこちない様子だった子どもたちは体を動かすうちに表情が和らぎ、どんどん笑顔になっていくのが見て取れた。この機会が設けられたのも大谷選手からグラブが届いたからこそ。遠く離れたロサンゼルスからスーパースターのパワーが届いている気がした。

 飯田小3年の新屋葉奈(はな)さん(9)が「外で遊ぶことも少なくなった。体を動かすと気持ちいい」と話せば、この日、白山市の避難先から珠洲に戻ってきた同小4年の瀬戸谷結芽(ゆめ)さん(9)は「みんなと一緒に遊ぶのはやっぱり楽しい」と満面の笑みを見せた。

  ●駆けっこできる日を

 通常であれば、小学校のグラウンドは休み時間や体育の授業になると、子どもたちの元気な声が響き渡る。珠洲の子どもたちにもそんな日常があったはずだ。「何も気にすることなく、みんなとグラウンドで駆けっこできる日が来るといいな」。飯田小4年の濱心花(このか)さん(10)の一言がかなう日を心から願っている。

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