福島県内59市町村防災アンケート㊤ 「住民の費用負担」7割 県、簡易改修の周知強化 住宅耐震化への課題

 福島民報社は能登半島地震を受け、福島県内59市町村に防災力強化に関するアンケートを実施した。県が2030(令和12)年度までに耐震性の不十分な住宅のおおむね解消を目指す中、耐震化を進める上での課題として、全体の約7割に当たる40市町村が「住民の費用負担の大きさ」を挙げた。55市町村は耐震改修に補助していると回答したが、県民が自己負担の生じる改修に二の足を踏んでいる現状が浮かび上がった。

 5年に1度行われる国の住宅・土地統計調査によると、直近の2018(平成30)年度調査での県全体の住宅耐震化率は87.1%。全国平均の87%とほぼ同水準となっている。

 能登半島地震では今月22日現在、災害関連死を含め241人が犠牲となり、倒れた建物の下敷きになるなどして亡くなった人が直接死の約9割を占める。被害が特に大きかった石川県珠洲市の耐震化率は51%、同県輪島市は45%と全国平均を大幅に下回り、被害拡大の一因となった可能性が指摘されている。アンケートではこうした被害の状況を踏まえ、各市町村が抱える耐震化を巡る課題や耐震化の進捗(しんちょく)状況などを聞いた。

 県によると、一般的な2階建て木造住宅の耐震改修には250万円程度がかかる。多くの市町村が改修費の5分の4、100万円を上限に補助しているが、補助分を差し引いても住民には150万円ほどの自己負担が出る試算となる。

 費用負担の大きさが課題とした市町村のうち、耐震化率58.7%の古殿町は耐震診断と耐震改修の支援制度を設けているが、2018年度以降は町民からの利用が絶えている状態だ。担当者は「自己負担の大きさが改修の支障となっているのでは」との見方を示す。

 耐震化率88.4%のいわき市は耐震診断・改修に加え、現地建て替えなども支援対象に含めている。市の担当者は個人財産である家屋の取り扱いは所有者の判断になるとした上で、耐震性を高める重要性を理解してもらうため、情報発信を強める方針としている。

 県は改修に伴う金銭的負担の軽減が耐震化推進の鍵とみて、居間や寝室など長時間過ごす居室のみを強化する「簡易改修」の周知に力を入れている。簡易改修の費用は一般的に100万円程度で、市町村を通じて5分の4、最大60万円を補助する仕組み。住民の自己負担は40万円前後となり、家屋全体を改修した場合に比べて金銭的負担を抑えられるメリットがある。

 費用負担以外の耐震化の課題では、9市町村が「高齢化」を挙げた。昭和村は高齢化率が55.5%と県内3番目に高い。村の担当者は年配でも大地震を経験していない人が多いことが耐震化率が24.9%と低い背景にあるとみる。「耐震化の必要性を認識してもらえるように努めたい」としている。

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