「高岡発ニッポン再興」その136「地域を守る」住宅支援を独自で

出町譲(高岡市議会議員・作家)

【まとめ】

・能登半島地震、これまでの大災害で陣頭指揮をとったリーダーの仕事ぶりから現場第一主義を確信。

・鳥取西部地震では、片山善博鳥取県知事は国の支援を受けず、県の貯金で住宅支援をした。

・何より大切なのは、「地域を守る」こと。

能登半島地震で現場の声を聞くのが重要だと思っています。私自身、何人もの、液状化の深刻な伏木地区や吉久地区の方々の声を聞きました。将来の不安を少しでも取り除けるのか。それが政治家の仕事だと思っています。その中から政策を打ち出す。そんな行動を教えてくれたのは、これまでの大災害で陣頭指揮をとったリーダーです。私は彼らの仕事ぶりを見て、現場第一主義を確信しています。

尊敬するリーダーの1人は、鳥取県知事だった片山善博さんです。もともと、総務官僚で、私がニュースデスクだったテレビ朝日の報道ステーションによく出演してもらいました。鳥取西部地震が起きたのは、2000年10月です。片山さんは就任して1年半しかたっていません。

その時の奮闘ぶりは伝説的ですね。現場の声を聞いて、わずか11日で、住宅再建に300万円支援する制度をつくりました。国の反対を押し切ったのですからすごいですね。

片山さんは地震が発生してから連日、被災地に出向かれました。当初は命が助かったことで、被災者は明るかったそうです。しかし、しばらくすると、落ち込んでいる人ばかりになったのです。「これからどうしよう」と不安になったというのです。残りたいけど、家を直すお金がない。東京にいる子供のところに行こうという人が次々に現れたのです。

その時、片山さんは地域が崩壊すると、懸念を抱きました。そして、ピンときたのは、住宅支援です。「住むところをどうしよう」という住民の不安を解消する必要があると思ったのです。被災した鳥取県西部は高齢化率の高い地域です。ローンを組むのも簡単ではありません。

道路や橋などは、政府が支援してくれていますが、当時、住宅への支援はなかったのです。住宅への公的支援をしなければ、住民がどんどん地域から離れていくと、片山さんは考えました。そこで、鳥取県は独自に住宅再建の支援をしようとしました。それに反対したのは、国です。税金を住宅という個人の財産に使ってはいけないと主張したのです。

片山さんはこれに毅然と立ち向かいました。道路や橋を直しても、そもそもそこに住む人が土地から去っては元も子もないと主張し、押し切りました。

そして、片山さんは独自に、住宅再建に300万円支援する制度を設けたのです。国からの支援を受けず、県の貯金を使ったそうです。大英断ですね。住宅再建支援策ができたのは、地震が起きてから11日目です。その後、被災地の皆さんが元気になったそうです。メンタルケアに当たった精神科医も、住宅再建支援策について「最大のメンタルケアになった」と話していました。

私は地震のことばかり考えています。今も数多くの被災者と話しながら、政府関係者、被災自治体関係者などと議論しています。復興の道筋を探しているのです。片山さんではないのですが、地域が崩壊するのではないかと懸念しているのです。何より大切なのは、「地域を守る」ことです。震災対応が最優先なのです。来月開催される高岡市議会3月定例会、私は強い思いで、質問します。

トップ写真:地盤の液状化による傾いた住宅(鳥取西部地震)出典:内閣府防災情報のページ

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