秋冬タマネギに商機あり 淡路から新鮮なおいしさ1年中 島内農家に栽培の動き、真夏の植え付けに苦労も

秋に収穫を迎えた野口ファームの新タマネギ=南あわじ市榎列大榎列

 兵庫県の淡路島を代表する特産物のタマネギ。春先から初夏にかけて収穫、保存し、順次出荷していくのが一般的だが、秋や冬にも収穫できるよう栽培する農家が、島内で少しずつ出てきた。1年のより長い期間、新鮮なタマネギを提供でき、手がける農家は「おいしい新タマネギをより多くの人に食べてもらえる」と胸を張る。(古田真央子)

 瀬戸内の温暖な気候の中で育つ淡路島のタマネギ。みずみずしく、甘くて柔らかいのが特徴だ。

 通常は秋に種をまき、春に収穫。新タマネギとしてすぐに出荷したり、壁がなく風通しがよい「たまねぎ小屋」につり下げて乾燥させ、さらに甘みが増した状態で初夏から来春にかけて出荷したりする。

 一方で、島内では数年前から、従来の流れをアレンジし、より長く新タマネギを提供しようと工夫を凝らす農家が増えつつある。

 南あわじ市榎列大榎列の「野口ファーム」はそんな農家の一つだ。

 同ファームは以前、春から初夏に収穫したタマネギを保存し、徐々に出荷していたが、12月ごろに全て売り切れたことも。「お客さんに『次はいつですか』と聞かれる度に4月ごろと伝えていたが、もどかしかった」と代表の野口俊さん(39)は振り返る。

 もっと早くタマネギを収穫できないか。野口さんは2018年、まず3月を目指し、挑戦をスタート。翌年は1月、次の年は12月と目標を早め、21年に11月からの収穫に成功した。

 従来の栽培も続け、11~2月は「冬の新タマネギ」、3~5月は「春の新タマネギ」として出荷。6月以降は収穫したタマネギを保存して順次出荷し、1年を通じて提供する体制を整えた。

 今季は冬の新タマネギとして「スーパーアップ」「浜笑(はまえみ)」の2品種を栽培。昨年7月末に種を植えて5日間、日陰で育てた後、発芽した苗をネットで覆い、25日間、太陽の光に当てた。成長後、田んぼに植え付け、同11月中旬に収穫期を迎えた。

 一方で、冬の新タマネギ栽培はリスクも伴う。夏は日差しが強く、厳しい暑さが続くため1日2回、大量の水やりに時間を要する。

 台風や強い風雨も乗り越えなければならない。被害が出れば、排水作業などに労力がかかる。野口さんは「苦労も多いが、お客さんの期待に応えたいという思いが強い」と力を込める。

 同ファームで新タマネギ作りを先導する芝孝太さん(26)は「1年を通していろんな人にタマネギを食べてほしい」と話した。

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