「紫式部、低い立場自覚し闘った」 ジェンダーから読み解く平安文学とは

ジェンダーの視点から古典文学について語る京樂教授(野洲市辻町・銅鐸博物館)

 「源氏物語」などの古典文学をジェンダー史の視点から読む講演が、滋賀県野洲市の銅鐸博物館で開かれ、滋賀県立大学の京樂真帆子教授が作者の紫式部ら女性が置かれていた環境を読み解いた。

 男女共同参画を目指す団体「野洲ジェンダーを考える会」が主催。紫式部を主人公にした大河ドラマ放映で平安時代に関心が高まる中、講座を企画した。

 平安京の都市社会史とジェンダー史を専門とする京樂教授は、「源氏物語」の一場面から、女性のプライバシーに配慮のない男性の振るまいなど当時の感覚を紹介。「紫式部日記」からは、自身が侍女から「才能をひけらかす人」と言われているのを聞きつけ「一」という文字も人前では書かないことにした、との記述を挙げ、「紫式部は女性からも無意識のバイアスを受けていた」と指摘した。清少納言は「枕草子」で、男女の立身出世の格差に愚痴を吐露している。

 京樂教授は、漢文のできた紫式部や清少納言らは「ジェンダーという言葉もなかった時代に女性が低い立場に置かれていることを自覚し、闘っていた」と指摘。現代の社会にも「まだまだ課題があることを紫式部に伝えたい」と結び、満席となった会場の参加者は熱心に聞き入っていた。

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