N響・正指揮者に任命された下野竜也。故郷・鹿児島で、いま語る「音楽人生の原点」と「世界のオザワ」への思い

取材に応じる下野竜也。Tシャツの胸元には「薩摩にせどん」の字が=鹿児島市の宝山ホール

 世界的に活躍する鹿児島市出身の指揮者・下野竜也が、15日に同市であった日本フィルハーモニー楽団九州公演でタクトを振った。昨秋には、NHK交響楽団(N響)の正指揮者に就任。さらなる飛躍を期す下野に今後の抱負や「自分の音楽人生の原点」と語る鹿児島への思いを聞いた。

 日本フィル九州公演で指揮台に立つのは、8年ぶり3回目。最初の2006年は、緊張が大きかったという。「今回はうれしい気持ちもあるが、気負いを持つことを忘れずステージに臨んだ」。故郷での指揮は1年ぶりで「鹿児島での公演は、やっぱり独特の緊張感に包まれる」とほほ笑む。

 昨年10月、N響の正指揮者に任命された。1926(大正15)年に新交響楽団として結成された歴史ある楽団。過去の正指揮者には岩城宏之、外山雄三ら日本を代表する名指揮者が名を連ねる。

 就任の1週間ほど前にオファーがあり、初めは驚きが強かったと話す。それでも「憧れの方々と同じポジションに就くことができたことは、光栄であり、とてもうれしい」。世界的にもレベルの高いオーケストラの指揮について「重責を感じているが、自分を高める機会にもなる」と話す。

 N響の指揮者陣7人のうち、5人が外国人。現在の日本人マエストロは、下野と尾高忠明(2010年就任)の2人だ。「日本人指揮者だからできることを探していく。クラシックに触れる機会のない人々にも、広められる活動を増やしたい」と抱負を語る。

 今月6日に亡くなった小澤征爾は、かつて代役に抜てきされたこともある縁の深い“先輩”だ。「日本のクラシック好きなら誰もが憧れる大スター。眼光鋭く、圧倒的なオーラがあった」と振り返る。「太陽や星のような方。音楽に対しての姿勢を見習うべき存在だ」としのんだ。

 自身は小学校でトランペットを始め、学生時代は鹿児島大学管弦楽団と鹿児島交響楽団に参加。原点の地について「音楽家や芸術家を大切にしてくれる県だと感じている」と言い、郷土のファンに向けて「これまで自分は、十分支えてもらった。今後は、自らも音楽を通して応援する立場になれれば」と語った。

日本フィル九州公演で、タクトを振る下野竜也(右)=15日、鹿児島市の宝山ホール

© 株式会社南日本新聞社