ハレップのドーピング問題で元女王クリステルスがコーチを猛批判「チームに何の処分もないのが信じられない」<SMASH>

四大大会のシングルスで4度の優勝を誇る女子テニス元世界ランク1位のキム・クリステルス氏(ベルギー/40歳/21年引退)が、男子元1位のアンディ・ロディック氏(アメリカ/41歳)が運営するポッドキャスト『Served with Andy Roddick』に出演。その中でシモナ・ハレップ(ルーマニア/32歳/元1位)のドーピング違反に関して意見を述べ、原因となったコラーゲンを提供したとされる当時のコーチ、パトリック・ムラトグル氏(フランス/53歳)に何の制裁も下されていないことに対して怒りをあらわにした。

既報の通りハレップのドーピング違反は、2022年8月の全米オープンで採取した検体から禁止物質の「ロキサデュスタット」が検出されたことに加え、23年5月に明らかになった「生体パスポート」(選手の血液成分などの情報を蓄積したデータ)に関わる違反。これによりテニスの不正行為を監視する第三者機関「ITIA」から4年間の資格停止処分(22年10月~26年10月)を科せられた。

そのドーピング違反の原因はコーチのムラトグル氏から薦められたコラーゲンの摂取であるとされており、同氏は以前ルーマニアテニス連盟のインタビュー動画で「一連の報道は事実だ」と潔く認めていた。しかし今のところ“主犯”のムラトグル氏には制裁が科されたとの情報は出ていない。それを踏まえてクリステルス氏は怒りを禁じ得ない様子でこうコメントした。

「私が一番怒りを示したいのは彼女(ハレップ)のチームよ。チームには何の処分もなく、選手にだけ処分が下されるなんて信じられない。そのコラーゲンの摂取を提案したのは彼女のチームなのよ。彼女は何の疑いもなくそれを摂取しちゃったけど、そもそも選手というのはチームや周りの人々が正しいことをしてくれるだろうと信じながら動くものだわ」
「起こした行動の結果は選手自身に反映される。今回のケースは選手が(チームに)操作された結果発生したものだと思うわ。特に女子選手の場合はコーチが責任を負う状況が作られやすいけど、それがその選手を操作することにつながる。今回のように選手の周りで起こる全てのことをチームがコントロールしたという事実を定義するのに、“操作”以外に表現する言葉がないわ」

かねてから無実を訴えてきたハレップはスポーツ仲裁裁判所への提訴を行ない、その審理が2月9日に終了したばかり。21日には自身のSNSで「審理ではドーピングなど一切行なっていないことを示せた」と手応えを綴っていた。だがクリステルス氏は仮にハレップの疑いが晴れたとしても「また同じことが繰り返されるかもしれない」と懸念する。

「私は女子ツアーの将来を興味深く見ている。今回のようなことが再び起こる可能性はあり、実際に私たちは過去にムラトグル氏のようなコーチがいるということも知った。そういう人はアスリートの人生を含め全てをコントロールしたいと考えているわ。それは危険な兆候よ。シモナは不幸な立場にあると思う。彼女は色々な形で前例を作らなければならないのに、意思決定に関わった他の誰も、彼女のように代償を払わないのだから」

とにかく今はハレップに前向きな判決が下されることを願いたい。

文●中村光佑

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