点字ブロック上に行列、妨げに? 宇都宮駅西口バスロータリー 視覚障害者から“意外”な意見 【あなた発 とちぎ特命取材班】

ロータリー中央付近のバス乗降場。利用者が点字ブロック上に並んでいる=1月25日午前7時25分、宇都宮市川向町

 JR宇都宮駅西口ロータリーで「バスなどを待つ利用者が点字ブロック上に並び行列ができている。視覚障害者の通行の妨げになるのでは」という声が、下野新聞「あなた発 とちぎ特命取材班」(あなとち)などに複数寄せられた。現状を調べようと、当事者の取材を進めると、意外な事実が見えた。障害者の道しるべとなるのは、点字ブロックだけではなかった。

 厳しく冷え込んだ5日午前7時10分過ぎ。ロータリーでは、駅から出てきた学生や会社員らが点字ブロックの上や傍らに沿うように列をつくった。バスが到着すると列は消え、しばらくすると再び列をなす。1月下旬から2月上旬の間の数日、現地を訪ねたが、変わらぬ朝の風景だった。

 路線バスを運行する関東自動車(宇都宮市)によると、ロータリーには路線バスの乗降場が16カ所ある。

 現地で観察していると、乗降場ごとに行列の特徴があるように見えた。駅舎寄りで広い歩道がある乗降場では、点字ブロック上に立つ利用客は、それほど多くない。ブロックに沿うように整列している印象を受けた。

利用客への声かけも

 利用客の足元を見ると、特に乗客の多い駅舎側乗降場では、先頭からレーン状の白線が伸びている。関東自動車によると、駅舎内に列が伸びないようにするための工夫だという。結果的に、点字ブロックをふさがない効果も生まれていそうだ。また誘導を担当する関東自動車の係員が毎朝、2、3人配置されており、乗客の誘導とともに、点字ブロック上に立つ利用客への声かけもしているという。

 一定の秩序が保たれているように見える駅舎側の乗降場。一方、ロータリー中央付近の乗降場の方が、点字ブロックをふさぐケースが多いように感じた。学校や団地へ向かうバスの乗降場は時折、ペデストリアンデッキへ続く階段にまで行列が伸びるほど混雑するが、歩道は狭い。限られたスペースで、点字ブロック上に立たざるを得ない利用客もいるのかもしれない。

 改善の余地はあるのか。管理する宇都宮市や関東自動車に聞いた。ロータリーの点字ブロックは1983年に整備され、設置位置は国のガイドラインなど基準をクリアしている。関東自動車は、時刻表などが掲示された各乗降場の案内板や、デジタルサイネージで「点字ブロックの上に立たないように」と案内している。

 行列と点字ブロックを分かつ効果のあるように見えたレーン状の白線はどうか。残念ながら、ロータリー中央部の狭い乗降場に設けることは難しいという。市は「今後も状況を注視し、必要があればバス事業者などと連携して改善に取り組んでいきたい」としており、よりよい環境に向けた模索を続ける意向だ。

優先席と同じ?

 現地の状況を視覚障害者はどう思っているのか。県視覚障害者福祉協会にも話を聞いた。

 自身も全盲である加藤範義(かとうのりよし)副会長(77)は「点字ブロックはつえと同様、私たちにとって命綱」と前置きした上で、意外な言葉を口にした。「点字ブロックを常に空けておく必要はないと思う」

 どういうことだろうか。加藤副会長は「点字ブロックは優先席と同じ。(点字ブロック上を)視覚障害者が歩いてきたら譲ったり、声をかけて誘導してくれたりすることが望ましい」と話す。「むしろ状況によっては、点字ブロック上に人がいてくれた方が安心する場合もある。人にぶつかったら『ここはバス停ですか』などと聞くこともできる」とも教えてくれた。

 自身も宇都宮駅西口ロータリーを利用することがあるが、点字ブロックのつくりを不便に感じたことはないそうだ。むしろ「ハード面はだいぶ進んできた」と感じている。

 ただ点字ブロック上でスマートフォンを操作して周りに気付かない人がいたり、自転車など障害物が置かれていたりするケースは少なくなく、視覚障害者を悩ませているという。加藤副会長は「配慮などソフト面がもっと良くなればいい」。改善策は、心の内にあるのかもしれない。

駅舎寄りの乗降場で列を作ってバスを待つ利用者たち=2月5日午前7時20分、宇都宮市川向町
駅舎寄りの乗降場でレーン状に引かれた白線=2月上旬、宇都宮市川向町

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