再建中のウィザーズで初の先発落ちを経験したジョーダン・プール「チームのために自分ができることをするだけ」<DUNKSHOOT>

再建中のワシントン・ウィザーズにおいて、カイル・クーズマやタイアス・ジョーンズらとともに、若いチームを牽引する主力として迎えられた24歳のジョーダン・プール。しかし2月22日のデンバー・ナゲッツ戦で、移籍後初のスターター落ちを経験した。

ウェス・アンセルドJr. HC(ヘッドコーチ)のフロント職への移動に伴って1月下旬から暫定HCとして指揮を執っているブライアン・キーフは、プールのベンチへの”格下げ”は、「チーム全体の戦力を底上げするため」と説明。

さらに「ジョーダンは、私が着任して以来、チームでトップクラスのネットレーティングを叩き出している選手」と、むしろ彼の功績を評価しての采配であったことを地元紙『ワシントン・ポスト』に明かしている。

ただ。実際にここ最近のプールの成績を見ると、7日のクリーブランド・キャバリアーズ戦では、24分半のプレータイムで無得点&ファウルアウト、5日後のダラス・マーベリックス戦でも、26分半コートに立って3得点と、2月最初の7試合は平均10.2点、フィールドゴール成功率29.9%と精彩を欠いている。

本人も、「常識的に考えて、この状況で僕がどう感じているかはわかるはずだ」と同紙にコメントした。
ゴールデンステイト・ウォリアーズ時代も控えだったとはいえ、ステフィン・カリー、クレイ・トンプソンとスーパースターが陣取るロスターでベンチ要員になるのと、ルーキーのビラル・クリバリーなど、若手選手のバックアップを務めるのでは状況は大きく異なる。チームの中核として迎えられた、という認識とプライドがあれば尚更だ。

「僕はただ、コートに出てチームのために自分ができることをするだけだ。僕には自分がコントロールできること以外のことはできないから」

ナゲッツ戦後にそう語っていたプールは、ベンチスタートで18得点をマークしたが、試合は20点差でディフェンディング・チャンピオンに敗れた。

加えて、第3クォーター終盤、コーリー・キスパートに出そうとした不用意なワンバウンドのスローインを、ジャマール・マレーにスティールされたシーンは、「史上最悪級にアホなスローイン」と欧州のメディアでも酷評されている。

プールといえば、シュートモーションに入ったところでスッ転ぶなど、NBAのご意見番シャキール・オニールが選ぶ恒例の『珍プレー大賞』で今季中盤戦のMVPにも輝いているだけに、その珍プレーコレクションに新たなアイテムを加わってしまった模様だ。
2019年のドラフト1巡目28位でウォリアーズに指名されてNBA入りしたプールは、ルーキーイヤーから毎年Gリーグのサンタクルーズ・ウォリアーズに送られていた下積み時代を持つ。

だがそのGリーグでの経験により、彼は「ここでよりスキルを身につけて、NBAに戻って重要な局面を担う選手になる!」とモチベーションを見出したのだという。

その努力は実り、21-22シーズンに初めて出場したプレーオフでリーグ史上16人目となる3戦連続25得点超えの活躍で、チームの優勝に貢献。カリー、トンプソンに次ぐ“第3のスプラッシュ・ブラザーズ”の称号を得るに至った。
Gリーグ時代にプールが特に意識していたのは、「接戦となった時に決定的なプレーができる選手になること」と以前話していたが、キーフACも、「プールは我々にとって決定的な仕事をしてくれる選手」と評価している。

巷では、「ウィザーズはプール中心のチーム構築は断念」といった声も聞こえているが、ウォリアーズ時代に逆境をモチベーションに変えた体験を糧に、ここから残りのシーズンで、チームへの影響力を発揮したいと本人は意気込んでいることだろう。

文●小川由紀子

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