「セクシー田中さん」小学館&日テレは原作者の言葉を「そのまま伝える法的責任はない」北村弁護士解説

北村晴男弁護士が20日、自身のYouTubeチャンネルに動画を掲載し、日本テレビ系ドラマ「セクシー田中さん」について、出版元である小学館、ドラマを制作した日本テレビ側の視点から解説した。2023年12月まで放送されていた「セクシー田中さん」については、原作者・芦原妃名子さんが今年1月26日にSNSで、内容が「改変」された脚本を修正するため対応に苦慮していたことを告白。結局最後の9、10話の脚本は芦原さんが自ら手がけたことなどを明かしていた。その後、芦原さんは同29日に訃報が伝えられた。

動画の視聴者からの「原作者と脚本家の橋渡しになる出版社とテレビ局には事実をそのまま伝える責任はないのでしょうか?」という質問。北村氏は「わたしの感覚では」と前置きした上で「法的な意味の責任はないと思っています」と明言した。

続けて「法的には、原作者が『ノー』と言ったら(ドラマを)作らない。『イエス』と言うまで脚本を変えていく。そういう責任があります、法的にはね」と原作者の著作者人格権における「同一性保持」の権利が最優先であると説明した。原作者の言葉をそのまま脚本家に伝えるのが「ベストだと思います」と自身の考えを示した。

一方で原作者と脚本家の間に入る出版社・テレビ局側の人間の考えも存在するとした。ドラマの脚本において、実績も実力もある脚本家がいた場合に「脚本家としてのプライドも持っているから、あまり事前に『こうせい、ああせい』と言ってしまうと、いいものが出てこない。だから『あまり(事前に)言い過ぎないでまずは書いてもらおう』と考えることもあり得る」と例示。「『脚本家が能力を最大限に発揮して、出てきたものを原作者にぶつけて、修正してもらった方がいい』と考えるケースもある」と解説した。脚本家、原作者の両方にストレスはかかるが「結果『ドラマは成功しました』という風にしたいんです」と制作側なりの心理もあると分析した。

ただ、北村氏も過去に自身の経験が再現ドラマ化され、悔しい思いをしたこがあると告白。再現ドラマは野球部だった高校時代、長野県大会の準々決勝の最後の打席で後悔が残っているという内容だった。「アウト」になった結果そのものは変わっていないが、アウトになるまでの過程に「改変」があり「大変傷つきました。自分の人生で大切にしていたものを勝手に壊された、大変つらい思いをしたことがあります」と芦原さんに思いをはせながら語った。

(よろず~ニュース編集部)

© 株式会社神戸新聞社