道長役・柄本佑は「すごく真面目な方…ロケ車の中ではずっと筋トレ」 大河ドラマ『光る君へ』の舞台裏、平安武官演じる北代祐太が語る

北代祐太さんと筆者・中将タカノリ

1月7日にスタートしたNHK大河ドラマ「光る君へ」。"世界最古の女性文学"と言われる「源氏物語」の作者・紫式部(まひろ)と、「源氏物語」の主人公「光源氏」のモデルと言われる藤原道長の間に流れる情愛と華やかな平安貴族の世界を描いたストーリーで、戦国時代、江戸時代を題材とすることが多い大河ドラマの中では異色の作品と言える。大石静さんの脚本、紫式部役・吉高由里子さん、藤原道長役・柄本佑さんの演技も光っており、メディアやSNSでは放送のたびに大きな反響が起こっているが、出演者たちはこの作品をどのように捉えているのだろうか。

藤原道長の同僚の武官・宗近役を演じる北代祐太さんにお話を聞いた。北代さんは吉本興業所属。お笑い芸人出身で、現在は俳優として数々の映画、ドラマに出演する次世代のホープだ。

歩き方、剣の持ち方…全然違った平安時代

ーーキャスティングの経緯は?

北代:オーディションです。演出家の方の前で「光る君へ」のワンシーンを演じたり、アドリブでお芝居をしたりという内容でした。一応、自分で納得できるだけのことはやれたかなと思っていたんですが、しばらくしてマネージャーさんから電話で「大河決まりました!」と。俳優をする上で大河ドラマは一つの目標だったので嬉しかったです。

ーー周囲の反響はいかがでしたか?

北代:告知が出ると、友達や仕事仲間から次々とお祝いのメッセージが届いてびっくりしました。このお正月は実家に帰っていたんですが、両親や祖父、祖母も本当に喜んでくれました。みんな僕が芸能の世界に入って心配していたと思うので、ようやく孝行になる仕事ができたかと感無量です。おかんが自慢するために友達との飲み会に僕を連れて行こうとしたのはさすがに断りましたけど(笑)。

ーー宗近の役どころは?

北代:快活で武人らしくて、当時の平均的な武官の感覚を持ったキャラクターなんです。彼がいるから道長の異質さ、感情の細やかさが際立つ、という感じの役どころです。

藤原道長役・柄本佑さん(中)と宗近役・北代祐太さん(右)

ーーどんな役作りをしましたか?

北代:撮影に入る前に筋トレで体を作り、弓や剣技も練習しました。一方、番組が用意してくれた所作稽古では平安貴族らしい動作、服の着こなしなども学びました。平安時代は一般的な時代劇で取り上げられる時代よりもっと昔。歩き方にしても剣の持ち方にしても全然違ってるんです。そういった感覚を自然に身に付けることは特に意識しました。

顔合わせでは300人の出演者、スタッフが勢ぞろい

ーー現場で印象的な出来事は?

北代:顔合わせでは約300人の出演者、スタッフが揃いました。まず一人一人挨拶をしていくんですが、主要キャストのみなさんはやっぱりそうゆうのに慣れててお上手なんですよ。ユースケ・サンタマリアさんなんて笑いまで取っていくし。ここで芸人出身の僕がスベるわけにはいかないと緊張したんですが、順番が回ってくるまで時間があったのでどうにか上手いことやれました(笑)。その後、出演者で第1話、第2話の台本の読み合わせ。みなさんさすがの表現力でした。個人的には特に佐々木蔵之介さん、吉田羊さんの本読みは面白いな、素敵だなと感動しましたね。

スタッフの方たちの意気込みも、とても伝わってきます。たとえば「光る君へ」は大河ドラマとしては珍しい平安時代のストーリーですが、当時のことってあまり文献が残っておらず、細かな部分はわからないことが多いらしいんです。でも、わからないから好き勝手やるんじゃなくて、絵巻物の描写から読み取ったりしながら、出来る限り平安の世界の息づかいを再現しようとみなさん必死に作品に向かい合っています。そういう姿を見ていると僕も役者として手を抜けないなと身が引き締まりました。

ーー同僚・道長役の柄本佑さんの印象は?

北代:柄本さんは俳優としてすごく真面目な方という印象です。武官らしい体づくりをするためロケ車の中ではずっと筋トレされていますし、稽古の時も同僚役の僕たちと積極的に関わって、「これはもっとこうしたほうがいいんじゃないか」とディスカッションを繰り返しています。個人としてもとてもフレンドリーな方。僕が高校の時に映画「WATER BOYS 2005夏」を見て俳優に憧れたという話をしたら当時の苦労話を教えてくれたり、共演できたことが嬉しくなりました。

ーー同じ吉本の秋山竜次さんの出演も話題になりました。

北代:僕もテレビで見ていて「こんな黒い平安貴族いるのか!?」と衝撃を受けました(笑)。秋山さんのコントは昔から大好きだったんですが、あの役への没頭の仕方は今回の藤原実資役にもとてもハマっていてあらためて凄いなと。お笑い出身の役者さんってフリとオチのような緩急が際立っているのが特徴です。今回の作品の中で秋山さんはすごくいいアクセントになっていらっしゃると思いますし、僕もそういう部分を担えればいいなと思います。

ーー「光る君へ」今後の展開について。

北代:出演者としては宗近にどんどん活躍してほしいんですが(笑)。視聴者目線ではまひろと道長がどんな関係性を築いてゆくのか気になります。のほほんとしたストーリーかと思っていたらいきなりまひろのお母さんが殺されてしまったり、平安時代だけど意外に起伏のあるストーリーじゃないですか。まひろがどのように「紫式部」になってゆくのか、また序盤では優しい好青年だった道長が、今後権力者になってどんな表情を見せるのか。きっと見れば見るほどハマる大河ドラマになると思うので、ぜひご期待いただきたいです。

NHK大河ドラマ「光る君へ」…藤原道長の同僚の武官・宗近役を演じる北代祐太さん

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まだまだ序盤だが、登場人物たちがおりなす複雑な人間ドラマと波乱のストーリーで数多の"中毒者"を生み出している「光る君へ」。異色の題材だけに、今作への評価は今後の大河ドラマの傾向にも大きく作用してゆくことだろう。未見の方はぜひこの貴重な機会に、平安浪漫の世界を堪能いただきたい。

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__【北代祐太(きたしろ・ゆうた)さん プロフィール】
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1988年11月生まれ。和歌山県出身。2011年にNSC34期生として入門。卒業後、芸人として大阪を拠点に活動を開始する。在阪時、吉本興業主催の舞台や関西の劇場に多数出演。のち、2022年に芸人から俳優へ転身し上京。上京後は舞台のみならず映画やドラマに加えてCMでの出演機会を着実に増やしている。
代表的な作品は次。フジテレビドラマ『テッパチ!』('22)、映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』('23)、大河ドラマ『光る君へ』('24)、フジテレビドラマ『婚活1000本ノック』('24)など。

2024年の大河ドラマ「光る君へ」のメインビジュアル(画像提供:NHK)
2024年の大河ドラマ「光る君へ」人物相関図(画像提供:NHK)

(まいどなニュース特約・中将 タカノリ)

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