水、家の前に来てるのに 輪島「復旧後も不通」続出 敷地内の管破断

水道管の復旧工事を進める関係者=25日午前11時、輪島市堀町

 能登半島地震により全域で断水が発生し、ようやく3割強が復旧した輪島市で、道路下などを通る水道管への通水が再開しても各世帯で水が使えないケースが続出している。敷地内への導水管、建物内の配管が破断しているためで、設備業者などには修繕の依頼が数多く寄せられ、20件待ちのところも。被災者からは「待望の水が目の前まで来てるのに蛇口をひねっても出ないなんて」と嘆く声が聞かれる。

 23日までに輪島市が公表している水道の復旧戸数は、輪島地区を中心に3777戸で、291戸で試験通水している。ただ、この数字は、修繕した水道管の「本管」からつながっている世帯、事業所の数で、そこからの管が破損していれば蛇口から水は出ない。地震前のように水道が使える「実際の復旧戸数」は少ないとみられる。

  ●個人修理が原則

 建物、敷地内の水道メーターから先は個人での修理が原則。市中心部の河井町にある事業所では、受水槽までは水が入ったものの、2階の配管から漏水した。蛇口から水は出ず、事業所の40代男性は「2階から滝のように水が流れてきて驚いた。業者に来てもらえるだろうか」と不安そうな表情を見せる。

 杉平町の40代女性公務員も、自宅内の配管から漏水していたとし「仮設住宅に入れたからお風呂に入れるが、残念」とこぼした。

  ●業者に依頼殺到

 家屋内などの漏水修理に追われる松木設備(河井町)では、現時点で10件程度の依頼がたまっており、松木吉春代表(69)は「年齢もあるし、たくさんはできない。しばらく待ってもらうしかない」と申し訳なさそうに話す。

 輪島市内では約7300戸で断水が続き、3月末の復旧を目指して本管の修繕が続いている。

 応援部隊である東京都水道局や横浜市水道局のほか、地元の一部民間事業者も加わっており、土木工事やガス事業なども展開する佐竹商店(町野町曽々木)は本管工事を優先しながら、合間を縫って地元の各家庭の依頼にも対応。近所のアルバイト経験者を「助っ人」として雇うなどして修理に当たっているが、依頼が20件ほど積み重なっているという。

 佐竹秀文社長は「地元業者として休んどれん。風呂もトイレも使えんと待っとるお客さんも大勢おる。精いっぱい対応せんなん」と腕をまくった。

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