小澤征爾さんとの思い出残したい 元小学校長・今田さん、書籍化へ準備

ウィーンの日本人学校に勤務し、小澤征爾さんと交流した思い出を語る今田正行さん=山形市

 山形市松山2丁目の元小学校長の今田正行さん(76)が、今月亡くなった世界的指揮者小澤征爾さんと交流した思い出を書籍化する準備を進めている。オーストリアの首都ウィーンの日本人学校に勤務していた28年前、小澤さんを招いた授業を企画し、児童生徒と触れ合う機会を設けた。「子どもたちの前で情熱的に教える小澤さんのことが忘れられない」と懐かしむ。

 今田さんは山辺町の作谷沢小を皮切りに教員生活を送り、国の派遣制度を通じ、ウィーンの日本人学校などで教えた経歴を持つ。2007年度に山形市南山形小の校長で退職した。

 ウィーンの日本人学校では教頭として1994~97年に勤務し、小中学生80~90人が在籍。国際舞台で活躍する小澤さんから子どもたちが得るものは大きいと考え、講師に招く授業を計画した。依頼すると「多忙にもかかわらず快諾してくれた。驚いた」と振り返る。

 授業は96年3月に行われた。今田さんは車での送迎を担当し当日、ウィーン国立歌劇場前で待ち合わせた。長髪をなびかせる当時60歳の小澤さんを後部座席に乗せ、ハンドルを握ったといい、「すごく緊張した」と笑う。打ち合わせ以外に会話した記憶はないが、誠実な受け答えが印象に残っている。

 授業時間は1時間の予定だった。だが、小澤さんは、指揮者の役割などを説明すると、20分ほどで話を終えてしまった。「これで終わりか…」。心配したが、“本番”はここから。児童生徒とのフリートークに切り替わった。「音楽で大変なことは何ですか」といった子どもたちの質問に対し、熱心に答える小澤さんの姿勢を今も覚えている。

 今田さんは俳句文芸誌「椅子」にウィーンでの生活などを執筆しており、小澤さんとの思い出も紹介してきた。自費出版などを通じて改めて、著書を残したい考えだ。「子どもが大好きで、気さくに接してくれた小澤さんのことを多くの方に知ってもらいたい」と話す。

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